
この記事は↑のまとめ記事から切り出した個別記事です。
あらすじ
この宇宙は無数の肉食動物が生息している森林のようなもの。他者の存在は自身の生存への脅威で、自文明の居場所を明らかにすることは他文明に餌のありかをさらすこと。地球文明はその存在を明かしてしまい、三体文明に狙われることとなる。
三体文明の艦隊群は過酷な環境の故郷を捨て、地球を目指して旅立った。三体文明は極小のAI智子を遠隔操作することで地球の科学の発展を妨害するとともに、全人類のコミュニケーションを傍受、地球の動きは筒抜け。しかし智子は、人間個人の頭の中で何が考えられているかは分からない。
そこで地球文明は4人の面壁者を任命。地球の予算をほぼ自由に使える絶対的な権限を移譲された各人が、自分の頭の中だけで秘密の対策を考える。これに対し、三体文明はそれぞれに対応した破壁者を当てがい、地球文明の企みを暴こうとする。
三体人の戦艦が地球に到達するまでは約400年。直接対決の前に、頭脳戦が始まった。
登場人物
メインの登場人物
- 逻辑:天文学者、社会学者、大学教授。三体文明が唯一恐れる地球人。今日を生きているただの個人で、人類文明の存続はどうでもいいと思っている。
- 葉文潔:宇宙学者。元地球三体協会のトップ。逻辑に宇宙社会学の公理を授ける。
- マイク・エヴァンス:地球三体協会のリーダー。逻辑の危険性に気づいている。第2部では既に死亡。
- 章北海:人民解放軍海軍の政治委員から宇宙軍将校に移動。大多数の地球人が敗北主義になる中で、人類の勝利を信じている。
- 常偉思:人民解放軍の将軍から宇宙軍司令官に移動、章北海がなぜ前向きなのか理解できない。
- 史強:国連惑星防衛理事会セキュリティー部門の警官。
- 庄顔:逻辑の理想の女性。中国美術を専攻し、大学を卒業したばかりの学生。黄昏を描くのが好き。逻辑からは「自分を幸せにすること、地球で一番幸せな女性になることが仕事」と言われる。
この中では特に逻辑と章北海が重要人物なので、以下に少し補足します。
●逻辑の補足情報
- 「Carpe diem(ラテン語で「今を楽しめ」)」が人類の最も神聖な義務だと思っている。
- 面壁者に任命されたことに納得がいかない。
- 三体文明は生存しようとしているだけで、それ自体に善悪はないと考えている。
- 妄想癖が激しく、理想の女性を想像して付き合っている気になる。
- 女性は火に照らされたときが最も美しいと思っている。
- 逻辑が小説を書くシーンがあるので、作者の劉慈欣さんが自分自身をを重ねているキャラ?
●章北海の補足情報
- 精神印章が始まる前に冬眠に入った宇宙軍将校。
- 常日頃から地球文明は三体文明に勝てると信じている。
- 敗北主義の精神印章がされていないことを理由に、人類最強の戦艦である自然選択の艦長となる。
- しかし本当は逃亡主義であり、人類を存続させるため、自然選択をハイジャックして宇宙に逃亡する。
4人の面壁者(Wallfacer)
面壁者とは?
少林寺の創始者が10年間、岩壁の前で瞑想したら岩壁に影が刻まれた、というエピソードに、1人で孤独に考えることを重ねていると思われます。
フレデリック・タイラー
- 元米国国防長官。
- 作戦 = 蚊群特攻:水素爆弾を積んだ無数の飛行部隊を作り神風アタックするプラン(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
マニュエル・レイ・ディアス
- 元ベネズエラ大統領。
- 作戦 = 水星からの水爆攻撃:水星に少なくとも100万発の水爆を用意して攻撃するプラン(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
ビル・ハインズ
- イギリスの脳科学者で、元EU委員長。
- 作戦 = 人間の脳を拡張させることで、科学技術を発展させようとするが、途中で偶然発見した精神印章という洗脳技術を使うことに(真の狙いはネタバレになるので割愛)。
逻辑
- 三体文明が唯一恐れる地球人。
- 作戦 = 特になし。理想の女性を見つけ、皇帝のような隠居生活を楽しむ。
- 葉文潔に宇宙社会学の公理(※)を授けられている〔これが三体星人が逻辑を恐れる理由〕
- 最初はやる気がなかったけれど、やがて呪文を思いつき宇宙に発射。すると狙った星が消滅し(=他の文明に攻撃された)、黒暗森林理論(※)に確信を持つ。
※:クリティカルなネタバレになるので、ここでの説明は割愛します。
上記4人の面壁者にそれぞれ破壁者が付くことになりますが、逻辑だけは例外。
その理由は、逻辑自身もまだ、三体星人が逻辑を恐れる理由に気づいていないから。
この状態はいわば、逻辑自身が破壁者のようなもの。逻辑は三体星人が逻辑を恐れる理由に気づくことができるのか?
感想
前振りでしかない第1部ですでにめちゃくちゃおもしろかったのに、第2部はさらにおもしろくなっていて本当に楽しめました。
特に楽しめた点を、以下の3つに整理してみました。
いよいよ三体文明との対決開始
第1部での前振りを経て、第2部ではいよいよ地球文明vs三体文明の戦いが本格化します。この遂に始まった感が第2部のバックボーンになる魅力だと思います。
と言っても、三体文明の戦艦が地球に到着するのはまだ4世紀先のことなので、直接的な戦闘ではなく、第2部は頭脳戦。
地球防衛軍は4人の面壁者を任命し、三体文明はそれぞれに破壁者をあてがうという設定が、よくできてるなと思いました。
三体文明強すぎ!地球の絶望感がヤバかった
途中で三体文明の探索機、水滴が一足先に地球にやってくるのですが、地球軍の宇宙戦艦2000隻がたった1機の探索機に次々とやられていくシーンが衝撃でした。
「三体文明強すぎ地球オワタ」ってなったときの絶望感が良かった、というか作者が上手かったと思います。
最後は愛の話で綺麗に着地
その後、逻辑ががんばって何とか地球は危機を脱し、最後は愛の話で綺麗に着地。小説も娯楽ですから、私はこういう綺麗な終わり方は好きです。絶望への振り幅が大きかったからか、最後に少しだけある愛の話が美しく感じました。作者は絶望を書きたくて書いているのではなく、希望を引き立てるために絶望を書いているのだと思いました。
この記事は以上です。ここまでお読みくださりありがとうございました。
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