族長の秋:あらすじ・感想・考察 ガルシア=マルケス

ガルシア=マルケス『族長の秋』のあらすじ・感想・考察 コロンビア

『族長の秋』とは?

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集英社

『族長の秋』はコロンビアの小説家ガルシア=マルケスさんが1975年に発表した長編小説です。

本作は作者曰く「権力の孤独についての詩」。

『百年の孤独』(1967年)の中で、アウレリャノ・ブエンディア大佐が「絶大な権力にともなう孤独」を感じるシーンがあるので、テーマ自体はその当時から作者の頭の中にあったと思われます。

『族長の秋』はいわゆるマジック・リアリズムの作品で、現実と神話の境界線が曖昧になるように描かれています。

その意味で、『族長の秋』は『百年の孤独』と同グループの作品と言えると思います(写実的な『コレラの時代の愛』『予告された殺人の記録』とは別タイプ)。

原文はスペイン語で、1975年のスペインでセールスNo.1を獲得しました。

『族長の秋』のあらすじ

永遠の独裁者である族長の人生が、三人称視点かつ非線形的な時系列で語られます。

族長はカリブ海の無名の国を支配する独裁者で、推定年齢は107~232歳。長期間にわたり権力を握っています。その支配は国家そのものと同義かつ神秘的な存在として描かれ、伝説や神話に包まれるとともに臣民たちから恐れ/畏れられています。

族長の支配は残虐、腐敗、そして臣民への絶対的な支配で特徴付けられていますが、族長は権力の孤独から不安と脆弱さに悩まされています。小説全体を通じて、族長は老いていき、ますます偏執的になっていきます。

本作は族長の狂気と衰え、そしてその時代が終焉を迎えるまでを、「Fuck death」から「Have a good death」までを、描きます。

『族長の秋』の感想・考察

語り手は誰なのか?

The Autumn of the Patriarch
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今回、私はオーディブル版(英語版)で読了しました。以下はその感想です。

本作の語り手は誰なのか?

ベースの語りは三人称で、そこに二人称や一人称が混入してくる点は、特徴的だったと思います。

これは語り手の変化なのか?会話文の挿入なのか?オーディブルではわかりませんでしたが、

調べたところ、会話文には鉤括弧がないらしいです(しかも改行がほとんどなく段落は6個しかない)。

ということは、二人称や一人称は語り手の変化(というか混入)を表している可能性が高そうです。

三人称の語り手自体も同一ではなく複数いそうですし、そこに二人称や一人称の語り手も混入してくる。

語り手が複数人いることは、本作の特徴の一つだと思います。

一人称複数We

エンディング近くで突然主語がWeの文が来て、え?、となりました。

そのまま流しそうになったけど、こういう違和感が大切と思って何度も聴き直してみたところ、

ここで族長が死に、永遠が終わり、人々に主権が戻ったのかもしれません。

一方、Weの文は冒頭早めにも登場します。結末と冒頭は繋がっていて、この物語は永遠にループするのかもしれません。

Weの文が他にどれくらいあるか把握できると理解が深まりそうです(Kindleの検索機能を使いたい)。

Patriarch(族長)とは?

本文中にPatriarch(族長)という言葉はありませんでした(聴き逃してなければ。Kindleの検索機能で確認したい!)

また、族長の職業はPresident(大統領)と明言があるのですが、作中で呼ばれるときはGeneral(将軍?)となっていました。

これにはどういう狙いがあるのでしょうか?

個人的には、Generalだと現実感、Patriarchだと神話感があるなと思いました。

実際、族長は神のように描かれていますし。

族長の名前が最後まで明言されないことと関係しているのかもしれません(神に名前はないという前提)。

本文で現実を語りつつ、タイトルと主人公で神話感を出す。このギャップで深みが生まれているように思いました。

タイトルが『大統領の秋』だったら、『族長の秋』より面白くなさそうですし。

族長の「秋」とは?

タイトルの「秋」は何を意味しているのでしょうか?

なぜ春、夏、冬ではないのでしょうか?

ここはわからなかったので、次回再読時はここに注意して読みたいと思います。

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