この世界文学100選は100の国・地域から1冊ずつ選んだものです。
世界文学〇選などと言うとき、たいていは欧米文学〇選みたいになることに疑問を感じ、もっと世界全体をカバーできないかと考えました。
ただ、1つの国・地域から1冊なので、名作の多い国は激戦で、ほとんどは落選となってしまいます。それでは乱暴なので、候補にあげた600冊以上の作品を本記事の最後に付録「地域別ページ」としてまとめました。そちらもぜひご利用ください(大作のため読み込みに少し時間がかかります🙇♂️)。
このページは、世界全体を幅広く俯瞰する際の入口としてご利用いただけますと幸いです。
あなたと本が共にありますように!
May The Books Be With You!
- 世界文学100選
- 紀元前~19世紀
- ギルガメッシュ叙事詩、紀元前18世紀〜17世紀、メソポタミア(イラク)
- ギリシア神話、紀元前15世紀、ギリシア
- コーラン、650年頃、サウジアラビア
- 千夜一夜物語、900年頃、ペルシャ(イラン)
- 源氏物語、紫式部、1008年、日本
- 北欧神話と伝説、12~13世紀、アイスランド
- スンジャタ叙事詩 An Epic of Old Mali、13世紀頃、マリ
- ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝、ゲンドゥン・リンチェン、15世紀末~16世紀初頭、ブータン
- ハムレット、ウィリアム・シェイクスピア、1601-03年、イギリス
- ドン・キホーテ、セルバンデス、1605年、スペイン
- 紅楼夢、曹雪芹、18世紀、中国
- 童話集、アンデルセン、1835〜1866年、デンマーク
- 戦争と平和、トルストイ、1865年、ロシア
- マルティン・フィエロ―パンパスの吟遊ガウチョ、ホセ・エルナンデス、1872年、アルゼンチン
- 人形の家、ヘンリック・イプセン、1879年、ノルウェー
- 人形、ボレスワフ・プルス、1887-89年、ポーランド
- ドイツの歌姫、ラーザ・ラザーレヴィチ、19世紀、セルビア
- ドン・カズムッホ、マシャード・ジ・アシス、1899年、ブラジル
- 20世紀
- ニルスの不思議な旅、セルマ・ラーゲルレーヴ、1906-07年、スウェーデン
- 青い鳥、モーリス・メーテルリンク、1908年、ベルギー
- 失われた時を求めて、マルセル・プルースト、1913年、フランス
- ユリシーズ、ジェイムス・ジョイス、1918年、アイルランド
- グレート・ギャツビー、スコット・フィッツジェラルド、1925年、アメリカ
- ドニャ・バルバラ、ロムロ・ガジェゴス、1929年、ベネズエラ
- グアテマラ伝説集、ミゲル・アンヘル・アストゥリアス、1930年、グアテマラ
- ラデツキー行進曲、ヨーゼフ・ロート、1932年、オーストリア
- マイトレイ、ミルチャ・エリアーデ、1933年、ルーマニア
- ビルマの日々、ミャンマー(ジョージ・オーウェル、1934年、イギリス)
- 眩暈、エリアス・カネッティ、1935年、ブルガリア
- 灼熱、マーライ・シャーンドル、1942年、ハンガリー
- 朝露の主たち、ジャック・ルーマン、1944年完成(死後出版)、ハイチ
- ドリナの橋、イヴォ・アンドリッチ、1945年、ボスニア
- ムーミン谷の彗星、トーベ・ヤンソン、1946年、フィンランド
- アンネの日記、アンネ・フランク、1947年、オランダ
- 台湾海峡一九四九、1949年、台湾(龍應台、2009年、台湾)
- 失われた足跡、アレホ・カルペンティエル、1953年、キューバ
- ペドロ・パラモ、フアン・ルルフォ、1955年、メキシコ
- 張り出し窓の街、ナギーブ・マフフーズ、1956-1957年、エジプト
- 蓮の道、マーティン・ウィクラマシンハ、1957年、スリランカ
- 崩れ行く絆、チアヌ・アチェベ、1958年、ナイジェリア
- この星でいちばん美しい愛の物語、チンギス・アイトマートフ、1958年、キルギス
- ミゲル・ストリート、V・S・ナイポール、1959年、トリニダード・トバゴ
- 僕とおばあさんとイリコとイラリオン、ノダル・ドゥンバゼ、1959年、ジョージア
- 汝、人の子よ、アウグスト・ロア=バストス、1960年、パラグアイ
- 緑の家、マリオ・バルガス・リョサ、1966年、ペルー
- 百年の孤独、ガブリエル・ガルシア=マルケス、1967年、コロンビア
- ハイファに戻って/太陽の男たち、ガッサーン・カナファーニー、1970年/1962年、パレスチナ
- 収奪された大地 ラテンアメリカ五百年、エドゥアルド・ガレアーノ、1971年、ウルグアイ
- ぼくは書きたいのに出てくるのは泡ばかり、ペドロ・シモセ、1972年、ボリビア
- モモ、ミヒャエル・エンデ、1973年、ドイツ
- パタゴニア、ブルース・チャトウィン、パタゴニア(1977年、イギリス)
- 薔薇の名前、ウンベルト・エーコ、1980年、イタリア
- 人間の大地、プラムディヤ・アナンタ・トゥール、1980年、インドネシア
- アルプスの少女ハイジ、ヨハンナ・シュピリ、1980-81年、スイス
- 真夜中の子供たち、サルマン・ラシュディ、インド(1981年、イギリス)
- クアラルンプールから来た大商人、クリス・マス、1982年、マレーシア
- 精霊たちの家、イサベル・アジェンデ、1982年、チリ
- 存在の耐えられない軽さ、ミラン・クンデラ、1984年、チェコ
- ニューロマンサー、ウィリアム・ギブスン、1984年、カナダ
- ガラスの帽子、ナヴァ・セメル、1985年、イスラエル
- 戦争は女の顔をしていない、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ、1985年、ベラルーシ
- スコットランド物語、ナイジェル・トランター、1987年、スコットランド
- 生命の樹、マリーズ・コンデ、1987年、グアドループ(フランス海外県 @ カリブ海)
- サマルカンド年代記、アミン・マアルーフ、1988年、レバノン
- 虚構の楽園、ズオン・トゥー・フォン、1988年、ベトナム
- カンボジア 花のゆくえ、パル・ヴァンナリーレアク、1989年、カンボジア
- オメロス Omeros、デレック・ウォルコット、1990年、セントルシア
- ダライ・ラマ自伝、ダライ・ラマ、1991年、チベット自治区
- 自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝、ネルソン・マンデラ、1994年、南アフリカ
- 楽園、アブドゥルラザク・グルナ、1994年、タンザニア
- 白の闇、ジョゼ・サラマーゴ、1995年、ポルトガル
- バルカン・ブルース、ドゥブラヴカ・ウグレシィチ、1996年、クロアチア
- ペンギンの憂鬱、アンドレイ・クルコフ、1996年、ウクライナ
- 吐き気、オラシオ・カステジャーノス・モヤ、1997年、エルサルバドル
- わたしの名は赤、オルハン・パムク、1998年、トルコ
- ムハマド・ユヌス自伝 : 貧困なき世界をめざす銀行家、ムハマド・ユヌス、1998年、バングラデシュ
- 息をひそめて、トレッツァ・アッツォパルディ、2000年、ウェールズ
- 21世紀
- ただ影だけ、セルヒオ・ラミレス、2002年、ニカラグア
- 君のためなら千回でも、アフガニスタン(カーレド・ホッセイニ、2003年、アメリカ)
- 闇の河、ケイト・グレンヴィル、2006年、オーストラリア
- オスカー・ワオの短く凄まじい人生、ジュノ・ディアス、2007年、ドミニカ共和国
- 菜食主義者、ハン・ガン、2007年、韓国
- 戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった、シエラレオネ(イシメール・ベア、2008年、アメリカ)
- 火によって、ターハル・ベン・ジェルーン、2011年、モロッコ
- 忘却についての一般論、ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ、2012年、アンゴラ
- ルミナリーズ、エレノア・カットン、2013年、ニュージーランド
- クレイジー・リッチ・アジアンズ、シンガポール(ケビン・クワン、2013年、アメリカ)
- わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女、マララ・ユスフザイ、2013年、パキスタン
- ネパール・インドの聖なる植物事典、トリローク・チャンドラ・マジュプリア、2013年和訳版刊行、ネパール
- 七つの殺人に関する簡潔な記録、マーロン・ジェイムズ、2014年、ジャマイカ
- バグダードのフランケンシュタイン、アフマド・サアダーウィー、2014年、イラク
- 13・67、陳浩基、2014年、香港
- ムルソー対抗調査(もうひとつの『異邦人』)、カメル・ダーウド、2015年、アルジェリア
- アフリカ文学講義――植民地文学から世界‐文学へ、コンゴ(アラン・マバンク、2016年、フランス)
- 越えてくる者、迎えいれる者、2017年和訳版刊行、北朝鮮
- プラータナー: 憑依のポートレート、ウティット・ヘーマムーン、2017年、タイ
- ミルクマン、アンナ・バーンズ、2018年、北アイルランド
- コスタリカ選詩集―緑の祈り、カルロス・フランシスコ・モンヘ、2019年和訳版刊行、コスタリカ
- アルタイの片隅で、李娟、2021年和訳版刊行、新疆ウイグル自治区
- 蝶男:エストニア短編小説集、メヒス・ヘインサー、2022年和訳版刊行、エストニア
- 紀元前~19世紀
- 付録:地域別ページ
世界文学100選
紀元前~19世紀
ギルガメッシュ叙事詩、紀元前18世紀〜17世紀、メソポタミア(イラク)
古代メソポタミアの英雄ギルガメッシュの冒険を描いた人類最古の文学作品。
ギリシア神話、紀元前15世紀、ギリシア
古代ギリシアの神々や英雄の愛憎劇を集めた伝説的な文化遺産。
コーラン、650年頃、サウジアラビア
イスラム教の聖典。アッラーによる啓示をムハンマドが受け取り神の意志を示す。
千夜一夜物語、900年頃、ペルシャ(イラン)
王妃シェヘラザードが夜毎に物語を語り、千夜にわたって命をつなぐ物語。アラビア・ペルシャ・インドの伝承や神話を含む。
ガラン版:初めてヨーロッパに紹介された版。必ずしも原典に忠実ではないが、子供でも読める品行方正な編集で世界的に広まった。世界の文化遺産。
バートン版:他の版より収録物語数が多く最も完備されているが、原典より官能性が強調された大人向けの版。
源氏物語、紫式部、1008年、日本
日本初の長編小説。貴族の源氏の生涯とその子孫の物語。平安時代の恋愛や宮廷生活などの心情を詳細に描き出す。
北欧神話と伝説、12~13世紀、アイスランド
『エッダ』は北欧神話の初期形態を伝える文書群で、神々の物語や英雄伝説を描く。『サガ』は中世アイスランドで成立した散文作品群で、主にノルウェーとアイスランドの歴史を扱う。
スンジャタ叙事詩 An Epic of Old Mali、13世紀頃、マリ
マリ帝国の始祖である英雄スンジャタ・ケイタの生涯と、マリ帝国の黄金時代への道程が描かれる。
ブータンの瘋狂聖 ドゥクパ・クンレー伝、ゲンドゥン・リンチェン、15世紀末~16世紀初頭、ブータン
ブータン人に語り継がれてきた遊行僧、風狂聖ドゥクパ・クンレーの、型破りの遍歴、奇行、聖と俗にわたる逸話集。ブータン仏教を知るための古典。
ハムレット、ウィリアム・シェイクスピア、1601-03年、イギリス
デンマークの王子ハムレットが父王の死の真相を知り、叔父クローディアスへの復讐を誓う。人間心理の描写が鮮やかな悲劇。
ドン・キホーテ、セルバンデス、1605年、スペイン
騎士道物語に没頭し現実と物語の区別がつかなくなった男が、騎士ドン・キホーテと名乗って冒険の旅に出る。スペイン文学の古典的名作。
紅楼夢、曹雪芹、18世紀、中国
貴族の生活、愛想劇、衰退を描きながら、中華文化の美学と哲学を表現。中国四大名著の一つであり、その中でも中国文学史上最高の小説。
童話集、アンデルセン、1835〜1866年、デンマーク
人間性や道徳、社会的価値などをテーマにした子供から大人まで楽しめる童話集。「人魚姫」、「マッチ売りの少女」、「みにくいアヒルの子」などが有名。
戦争と平和、トルストイ、1865年、ロシア
ナポレオン時代のロシアを描いた歴史小説。個々の人間が大きな歴史の流れにどのように影響を与えるかを深く掘り下げた。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
マルティン・フィエロ―パンパスの吟遊ガウチョ、ホセ・エルナンデス、1872年、アルゼンチン
スペインからの独立に主要な役割を果たしたガウチョ(牧童)の生活風景を歌った叙事詩。「アルゼンチンの聖書」とも呼ばれ、アルゼンチンの国民文学と称される作品。
人形の家、ヘンリック・イプセン、1879年、ノルウェー
新たな時代の女性の姿を世に示した戯曲。「女性蔑視からの解放」をテーマに描かれた。
人形、ボレスワフ・プルス、1887-89年、ポーランド
19世紀の社会史を一望に収めるリアリズムと、破滅的な情熱のロマンが交錯する、ポーランド近代小説の最高峰。世界中で愉しまれる古典中の古典。
ドイツの歌姫、ラーザ・ラザーレヴィチ、19世紀、セルビア
ドイツに留学したエリート医学生の西欧との出逢い、東欧との疎隔とその葛藤を描いた自叙伝的作品。計6作の中短編を本邦初訳。
ドン・カズムッホ、マシャード・ジ・アシス、1899年、ブラジル
偏屈卿と呼ばれた男の、数奇な?自叙伝?ブラジル文学の頂点。ブラジルでは「文学史上、最大の文豪」と高く評価され、紙幣にもなっていた作者の代表作。
20世紀
ニルスの不思議な旅、セルマ・ラーゲルレーヴ、1906-07年、スウェーデン
スウェーデンの子どもたちが、楽しく自国の地理・歴史を学ぶための“補助教材”として書きあげた物語。作者は1909年ノーベル文学賞受賞、スウェーデンの紙幣になっていたこともある。
青い鳥、モーリス・メーテルリンク、1908年、ベルギー
貧しいきこりの子どもチルチルとミチルが、「幸福」の象徴である「青い鳥」を求めて冒険の旅へ出る童話劇。本作で「幸せの青い鳥」という表現が定着。作者は1911年ノーベル文学賞受賞。
失われた時を求めて、マルセル・プルースト、1913年、フランス
主人公の回想と観察を通じて、社交界の人間関係や美の追求を描く。それまで固定的であった小説というものの考え方を変えるきっかけとなり、20世紀文学に新しい地平を切り開いた。
ユリシーズ、ジェイムス・ジョイス、1918年、アイルランド
ダブリンのとある1日を冴えない中年の男とその周囲の人々を通じて描く。各章や登場人物はホメロスの『オデュッセイア』と対応=1日には神話と同じ価値がある。20世紀前半モダニズム文学の最も重要な作品の一つかつ20世紀を代表する大長編小説。
グレート・ギャツビー、スコット・フィッツジェラルド、1925年、アメリカ
1920年代のアメリカ、ジャズ・エイジの華やかさと虚無感を描いたアメリカン・ドリームの象徴的な物語。アメリカ文学を代表する作品の一つ。
ドニャ・バルバラ、ロムロ・ガジェゴス、1929年、ベネズエラ
20世紀初頭のベネズエラの平原を舞台に、文明と野生の対立を描いたベネズエラ文学の代表作。ラテンアメリカ文学においても古典的名作。
作者の名を冠した「ロムロ・ガジェゴス賞」はスペイン語圏を対象とし、マリオ・バルガス・リョサ『緑の家』、ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』などが受賞している。
グアテマラ伝説集、ミゲル・アンヘル・アストゥリアス、1930年、グアテマラ
インディオの物語や伝説と、古代マヤの研究を融合した魔術的リアリズムの傑作。グアテマラを超えてラテンアメリカの民衆の伝統意識に形を与えた。作者は1967年ノーベル文学賞受賞。
ラデツキー行進曲、ヨーゼフ・ロート、1932年、オーストリア
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の危機を救った「ソルフェリーノの英雄」とその子孫の運命を、オーストリア=ハンガリー帝国の没落に重ねて描く歴史小説。
マイトレイ、ミルチャ・エリアーデ、1933年、ルーマニア
イギリスの植民地カルカッタを舞台とした、タブーを超えて惹かれ合う若い男女の悲恋物語。
ビルマの日々、ミャンマー(ジョージ・オーウェル、1934年、イギリス)
イギリス統治下の植民地ビルマで作者が目撃したものとは?「動物農場」「1984年」など後の作品への影響も垣間見える自伝的デビュー作。
眩暈、エリアス・カネッティ、1935年、ブルガリア
書物に人生を捧げる中年学者が、無知な女性との結婚を機に研究生活を侵されていく様をグロテスクに描いた。トーマス・マンにその氾濫する想像力と構想筆致を驚嘆させた作品。作者は1981年ノーベル文学賞受賞。
灼熱、マーライ・シャーンドル、1942年、ハンガリー
ハンガリーとウィーン、世紀末ハプスブルク帝国を舞台にした男の友情と、ひとりの女性をめぐる愛の結末。90年代末、本作の国際的な成功により、20世紀の最も重要な作家のひとりに名を連ねた。
朝露の主たち、ジャック・ルーマン、1944年完成(死後出版)、ハイチ
15年間のキューバへの出稼ぎから帰郷した主人公が、故郷の村を救う物語。若き生の躍動を謳歌する、緊迫と愛憎の傑作長編。ハイチ文学の父が37歳で他界する1944年に完成させた代表作。
ドリナの橋、イヴォ・アンドリッチ、1945年、ボスニア
ボスニアの古い橋と、橋の上を去来する人間たちの運命を400年にわたって描いた、東欧最大の作家による歴史小説。作者は1961年ノーベル文学賞受賞。
ムーミン谷の彗星、トーベ・ヤンソン、1946年、フィンランド
ムーミンと友人たちが地球に接近してくる彗星を調査する旅に出る。冒険、友情、協力、普遍的なテーマが子供から大人まで魅了し続ける人気シリーズ。
アンネの日記、アンネ・フランク、1947年、オランダ
ナチスドイツのユダヤ人狩りを避けるために隠れ家に潜んだ8人のユダヤ人達の生活を少女が日記に記録したもの。ユネスコの世界の記憶に登録。
台湾海峡一九四九、1949年、台湾(龍應台、2009年、台湾)
国共内戦に敗れた中国国民党の台湾撤退(外省人)と、その大波にのまれる現地台湾人。当時の日記や史料をもとした歴史ノンフィクション。
失われた足跡、アレホ・カルペンティエル、1953年、キューバ
大都会で虚しい日々を過ごしている音楽家が、インディオの幻の原始楽器を探しに南米の奥地へと旅立つ。近代から未開へと時間が逆行する不思議な旅。現代ラテンアメリカ文学最高傑作の一つ。
ペドロ・パラモ、フアン・ルルフォ、1955年、メキシコ
顔も知らぬ父親ペドロ・パラモを探して、主人公がコマラという死者ばかりの町に辿り着く。ガブリエル・ガルシア=マルケスなどラテンアメリカの作家たちに重大な影響を与えた作品。
張り出し窓の街、ナギーブ・マフフーズ、1956-1957年、エジプト
アラブ圏唯一のノーベル文学賞作家(2023年時点)の代表作『カイロ3部作』の第一作。イギリスからの独立運動が活発だった時代を舞台にした、旧市街に住む家族の物語。「張り出し窓」は古い社会習慣を代弁するもの。
蓮の道、マーティン・ウィクラマシンハ、1957年、スリランカ
村の因習、世俗からの解放を願い、自らが描く理想郷に生きようとするが・・・仏陀のような無欲に至ったひとりの無私な人物の短くも美しい生涯の物語。作者の最高傑作とされるスリランカ・シンハラ文学の金字塔。
崩れ行く絆、チアヌ・アチェベ、1958年、ナイジェリア
19世紀後半のナイジェリア東南部で、イギリスの植民地化の流れに巻き込まれていく人々の物語。全世界で1000万部のベストセラー、「アフリカ文学の父」の最高傑作。
この星でいちばん美しい愛の物語、チンギス・アイトマートフ、1958年、キルギス
愛をつらぬくため、二人は草原の彼方に消えた…伝説だけを残して。本作をフランス語版に翻訳した作家に「この世で最も美しい愛の物語である」と絶賛されたベストセラー。
ミゲル・ストリート、V・S・ナイポール、1959年、トリニダード・トバゴ
「ミゲル・ストリート」で生まれた十七の人生の物語は、みな風変わりで、そしてちょっと切ない。ポストコロニアル文学の源流に位置する作者の実質上のデビュー作。作者は2001年ノーベル文学賞受賞。
僕とおばあさんとイリコとイラリオン、ノダル・ドゥンバゼ、1959年、ジョージア
「私は自由が欲しかった。そのために笑いを選んだんだ」と述懐する作者の、笑いに満ちた半自伝的作品。20世紀後半ジョージアの代表的ユーモア小説。
汝、人の子よ、アウグスト・ロア=バストス、1960年、パラグアイ
1860年代から1930年代のチャコ戦争までの政治エリートと、抑圧されたパラグアイの間の混乱を描いた。パラグアイ史上最も著名な作家であり、ラテンアメリカ作家の中でも最重要人物の一人の代表作。1989年セルバンテス賞受賞。
緑の家、マリオ・バルガス・リョサ、1966年、ペルー
ペルーのアマゾン地域などを舞台に娼婦、原住民、軍、僧院など5つの物語が同時進行する物語の交響曲。作者の作家的地位を確立したラテンアメリカ文学の傑作。作者は2010年ノーベル文学賞受賞。
百年の孤独、ガブリエル・ガルシア=マルケス、1967年、コロンビア
ブエンディア一族が蜃気楼の村マコンドを草創し、繁栄を経て、やがて滅亡するまでの100年の物語。作者は1982年ノーベル文学賞受賞。
ハイファに戻って/太陽の男たち、ガッサーン・カナファーニー、1970年/1962年、パレスチナ
悲劇的な親子の再会を通して時代に翻弄される人間の苦しみ(ハイファに戻って)、クウェートへの密出国を試みる3人のパレスチナ難民の凄惨な末路(太陽の男たち)などを描いた、パレスチナ問題の苛酷な真実に迫る衝撃の作品群。
収奪された大地 ラテンアメリカ五百年、エドゥアルド・ガレアーノ、1971年、ウルグアイ
世界史や官製の歴史が無視、あるいは隠蔽してきた無数の事実をちりばめながら、過去五百年ラテンアメリカが外国によって開発=収奪されてきた様を描き出したラテンアメリカ史の古典。
ぼくは書きたいのに出てくるのは泡ばかり、ペドロ・シモセ、1972年、ボリビア
キューバ革命を背景に、遙か遠くの異郷から、故国の風景と人びとを謳った詩集。作者は日系ボリビア人。1999年国民文化賞。
モモ、ミヒャエル・エンデ、1973年、ドイツ
時間泥棒と戦う少女モモの冒険を描いた物語。人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に「時間」の真の意味を問う。
パタゴニア、ブルース・チャトウィン、パタゴニア(1977年、イギリス)
幼少期に見た一片の毛皮に魅せられ、パタゴニアへと赴いた旅を描く。見果てぬ夢の物語。紀行文学の新たな古典。
薔薇の名前、ウンベルト・エーコ、1980年、イタリア
1327年のカトリック修道院を舞台に起きる怪事件の謎をフランシスコ会修道士とベネディクト会の見習修道士が解き明かしていく。全世界で5500万部を超える世界的なベストセラー。
人間の大地、プラムディヤ・アナンタ・トゥール、1980年、インドネシア
オランダ占領下でインドネシア民族が覚醒し自己を確立していくインドネシア近代史再構成の物語。インドネシア文学史上の最高傑作ともされる大河歴史小説「ブル島4部作 The Buru Quartet 」の第一作。「アジアにおけるノーベル文学賞の最有力候補」(米誌Time)との呼び声も高かった。
アルプスの少女ハイジ、ヨハンナ・シュピリ、1980-81年、スイス
雄大な自然を背景に、深い喪失感を抱く人々が、ひとりの少女によって人間性を回復し再生していく、愛と感動の物語。家族の絆や地域社会との共生、エコロジーな暮らしへの回帰など現代的なテーマにあふれる作品。
真夜中の子供たち、サルマン・ラシュディ、インド(1981年、イギリス)
イギリスの植民地主義と英領インドの分離独立を主題としたポストコロニアル文学やマジックリアリズムの代表例。1981年ブッカー賞受賞。1993年と2008年のブッカー賞25周年および40周年ではブッカー賞のなかのブッカー賞も受賞。20世紀を代表する名作。
クアラルンプールから来た大商人、クリス・マス、1982年、マレーシア
近代化、経済成長という大きな流れに乗る者と、疑問を呈する者。マレーシアの国民的作家が、多民族国家が抱える諸問題に取り組んだ長編小説。
精霊たちの家、イサベル・アジェンデ、1982年、チリ
前世紀末からチリ・クーデターまでの一世紀を舞台に、三世代の女たちの運命を描く、幻想と恐怖と笑いに充ちみちた年代記。
存在の耐えられない軽さ、ミラン・クンデラ、1984年、チェコ
冷戦下のチェコスロバキアを舞台に、1968年のプラハの春を題材にした恋愛小説。人間の存在の軽さと重さを問いかける。
ニューロマンサー、ウィリアム・ギブスン、1984年、カナダ
SFの歴史を塗り替えた世界的名作。「マトリックス」という言葉やサイバースペース(電脳空間)という世界観を生み出し、サイバーパンクの起源として後世に絶大な影響を与えた。1984年ネビュラ賞、フィリップ・K・ディック賞、1995年ヒューゴー賞受賞。
ガラスの帽子、ナヴァ・セメル、1985年、イスラエル
ホロコースト生還者とその次世代がかかえる心の傷(PTSD)を描いた短篇集。「ガラスの帽子」とは、生還者の子や孫が生まれながらにかぶっている目に見えない帽子の比喩。
戦争は女の顔をしていない、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ、1985年、ベラルーシ
第二次世界大戦の独ソ戦においてソビエト連邦軍に従軍した女性たちの証言をまとめた戦争文学。作者は2015年ノーベル文学賞受賞(ジャーナリストとして初)。
スコットランド物語、ナイジェル・トランター、1987年、スコットランド
スコットランドの人気作家による歴史小説。古代ケルト王国から大英帝国の一翼を担った19世紀までの長い歴史を描く。
生命の樹、マリーズ・コンデ、1987年、グアドループ(フランス海外県 @ カリブ海)
曾祖父と母の生涯を中心に、曾孫/娘ココが語るルイ家四代の“悪辣な生”は、一家系の物語をこえたカリブ海現代史。作者は2018年ノーベル文学賞の代替賞ニュー・アカデミー文学賞。
サマルカンド年代記、アミン・マアルーフ、1988年、レバノン
11世紀の詩人オマル・ハイヤームと彼のルバイヤート(四行詩)を軸にしたペルシア歴史ミステリー。
虚構の楽園、ズオン・トゥー・フォン、1988年、ベトナム
旧ソ連で働くベトナム女性ハンが、モスクワ行き列車の中で回想する故国での哀切の物語。歴史的タブーとされた土地改革を正面から取り上げた社会主義国ベトナムの問題小説。
カンボジア 花のゆくえ、パル・ヴァンナリーレアク、1989年、カンボジア
国民の三人に一人の命が奪われたポル・ポト政権時代。奇跡的に生き延びた著者が、自らの体験を重ね、政治に翻弄される人々の悲劇を描く。行方不明の両親に、自身の無事を知らせるべく発表した話題の長編。
オメロス Omeros、デレック・ウォルコット、1990年、セントルシア
『イリアス』や『オデュッセイア』で知られるホメロスをオマージュしながら、カリブ海地域の歴史、文化、神話を織り込んだ叙事詩。作者は1992年ノーベル文学賞受賞。
ダライ・ラマ自伝、ダライ・ラマ、1991年、チベット自治区
チベットとダライ・ラマを知る恰好の入門書。生い立ちから、長きにわたる亡命生活の苦悩、宗教指導者たちとの交流、世界平和への願いなど、波乱の半生を綴る。1989年ノーベル平和賞受賞。
自由への長い道 ネルソン・マンデラ自伝、ネルソン・マンデラ、1994年、南アフリカ
南アフリカの反アパルトヘイト活動家かつ元大統領の自伝。非暴力を貫くか、暴力に訴えるか、その狭間で葛藤する。作者は1993年にノーベル平和賞受賞。
楽園、アブドゥルラザク・グルナ、1994年、タンザニア
20世紀初頭の現在のタンザニアを舞台に、少年ユスフの成長と東アフリカ沿岸地域の歴史的な大転換期を描いた物語。作者は2021年ノーベル文学賞受賞。
白の闇、ジョゼ・サラマーゴ、1995年、ポルトガル
突如として「白い闇」に覆われて失明するという謎の伝染病が一国を席巻する物語。善意と悪意の狭間で人間の価値が試される。1998年ノーベル文学賞受賞。
バルカン・ブルース、ドゥブラヴカ・ウグレシィチ、1996年、クロアチア
旧ユーゴスラヴィア民族紛争の最中に綴られたエッセイ集。セルビアやクロアチアなど紛争当事者である各国当局や、メディアがもたらす民族主義的な情報操作を批判した。
ペンギンの憂鬱、アンドレイ・クルコフ、1996年、ウクライナ
ソ連崩壊後の新生国家ウクライナの首都キエフを舞台に、売れない小説家と憂鬱症のペンギンを主人公とした物語。約20ヵ国語に訳されて国際的なベストセラーとなり、作者の名を一躍有名にした。
吐き気、オラシオ・カステジャーノス・モヤ、1997年、エルサルバドル
祖国エルサルバドルへの圧倒的な罵詈雑言と呪詛ゆえに、母が息子(作者)に対する犯罪予告を受け、現代ラテンアメリカ文学の鬼才が亡命を余儀なくされた問題作。
わたしの名は赤、オルハン・パムク、1998年、トルコ
オスマン帝国の首都イスタンブルを舞台に、イスラムと西洋の二大文明が衝突。細密画師が殺される事件を描いた極上のミステリー。作者は2006年ノーベル文学賞受賞。
ムハマド・ユヌス自伝 : 貧困なき世界をめざす銀行家、ムハマド・ユヌス、1998年、バングラデシュ
貧しい人に無担保で少額のお金を貸し、それを元手に事業を始めさせ、経済的に自立するよう支援する。作者が始めた「マイクロクレジット」は、世界中の貧困撲滅に大きく貢献した。作者は2006年ノーベル平和賞受賞。
息をひそめて、トレッツァ・アッツォパルディ、2000年、ウェールズ
1960年代のウェールズを舞台にした、イタリア系移民ガウチ家の物語。家族が暴力と貧困により崩壊していく様子を静かな語り口で鮮烈に描き出し、英文壇に衝撃を与えた。2000年ブッカー賞最終候補作。
21世紀
ただ影だけ、セルヒオ・ラミレス、2002年、ニカラグア
1979年、ソモサ独裁政権の崩壊を目前に控えていたとき、ソモサの私設秘書官が革命軍に捕えられ民衆裁判にかけられる…。歴史的事件の裏側をフィクションの力で再構築する現代ラテンアメリカ文学の新たな傑作。
君のためなら千回でも、アフガニスタン(カーレド・ホッセイニ、2003年、アメリカ)
アフガニスタンの首都カブールから始まる友情、裏切り、償いの物語。主人公と親友の関係は、世界に見捨てられたアフガニスタンを映した皮肉。映画化もされた世界的ベストセラー。
闇の河、ケイト・グレンヴィル、2006年、オーストラリア
ロンドンからシドニーへやってきた入植者と、現地先住民の出会い、衝突、和解。建国神話の奥に潜む闇を小説で描き出したオーストラリア文学史上屈指の国民的ベストセラー。
オスカー・ワオの短く凄まじい人生、ジュノ・ディアス、2007年、ドミニカ共和国
オタクの息子を心配した母親が彼を祖国ドミニカへ送り込むと、彼は一族の呪いを知ることになった。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化の激突。全米批評家協会賞(2007年)及びピュリツァー賞(2008年)受賞。
菜食主義者、ハン・ガン、2007年、韓国
ごく平凡な女だったはずの妻が、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく。表題作を含む三つの物語から成る連作小説集。2016年ブッカー国際賞受賞。
戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった、シエラレオネ(イシメール・ベア、2008年、アメリカ)
アフリカ西部の国シエラレオネの内戦を生きのびた少年兵士の自伝。純粋な少年が殺戮マシーンとなり、そこから立ち直るまでを詳細に記録したのは世界初でとても貴重。アマゾンが選ぶ死ぬまでに読むべき100冊に選出。
火によって、ターハル・ベン・ジェルーン、2011年、モロッコ
チュニジアのジャスミン革命のきっかけを作った青年をモデルとした物語。彼はなぜ焼身自殺をしたのか?その火はなぜ他の中東諸国へと燃え広がり「アラブの春」へと繋がっていったのか?
忘却についての一般論、ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ、2012年、アンゴラ
27年間にわたる泥沼の内戦下を独力で生き抜いた女性ルドをめぐる物語。2013年フェルナンド・ナモーラ文芸賞、2016年度国際ブッカー賞最終候補作、2017年度国際ダブリン文学賞。
ルミナリーズ、エレノア・カットン、2013年、ニュージーランド
1866年のゴールドラッシュに沸くニュージーランドで一攫千金を狙う青年を描いた物語。野心的な構想と創意溢れる設計、圧倒的長大さで世界を驚嘆させた。2013年ブッカー賞受賞。
クレイジー・リッチ・アジアンズ、シンガポール(ケビン・クワン、2013年、アメリカ)
アジアの超富裕層の生活を描いたラブコメだが、人種差別や移民のアイデンティティーといった現代性もあり。アメリカ・ヨーロッパ・アジアの女性たちを熱狂させ映画化もされたベストセラー。
わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女、マララ・ユスフザイ、2013年、パキスタン
「すべての子どもに教育を」と訴え、イスラム武装勢力に銃撃された経験を綴った自伝。女の子が教育を受ける権利を求める戦いの記録。作者は2014年ノーベル平和賞受賞。
ネパール・インドの聖なる植物事典、トリローク・チャンドラ・マジュプリア、2013年和訳版刊行、ネパール
インド生まれのネパール人として、両国文化に精通した作者が、仏教やヒンドゥー教の神々の祈りに捧げられる114種の植物をとりあげ、その神話・伝説と薬効を詳述。
七つの殺人に関する簡潔な記録、マーロン・ジェイムズ、2014年、ジャマイカ
ジャマイカの英雄ボブ・マーリー暗殺未遂事件(1976年)の犯人は何者なのか?ギャング、政治家、記者、CIA、亡霊など七十人が織りなす、公には語られない歴史。2015年ジャマイカ出身作家として初のブッカー賞受賞。
バグダードのフランケンシュタイン、アフマド・サアダーウィー、2014年、イラク
連日自爆テロの続く2005年のバグダードを舞台にした、中東×ディストピア×SF。国家と社会を痛烈に皮肉る、衝撃のエンターテインメント群像劇。ブッカー賞最終候補作。
13・67、陳浩基、2014年、香港
香港の歴史と社会を背景に、名刑事クワンの警察人生を描いた作品。香港社会の変化や警察のアイデンティティを問う社会派ミステリーとしての評価も高い。2015年、台北国際ブックフェア賞(小説部門)、第1回香港文学季推薦賞を受賞。
ムルソー対抗調査(もうひとつの『異邦人』)、カメル・ダーウド、2015年、アルジェリア
アルジェリア出身の作者がカミュの『異邦人』を反転。最も有名なフランス小説の一つを、ムルソーに殺害されたアラブ人の弟の視点から捉え返す衝撃作。2015年ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作。
アフリカ文学講義――植民地文学から世界‐文学へ、コンゴ(アラン・マバンク、2016年、フランス)
コンゴ生まれのフランスの作家による、2016年にフランスのコレージュ・ド・フランス芸術創造講座で行われた「アフリカにかんする8つの講義」。文学を超え、現代史や思想、社会問題にも広がる視野をもつ類ない文学史である。
越えてくる者、迎えいれる者、2017年和訳版刊行、北朝鮮
韓国入りした北朝鮮人作家6人と、韓国の作家7人による共同小説集。脱北作家たちの作品からは、窺い知ることが難しい北朝鮮民衆の暮らしぶりを知ることが出来る。一方、韓国人作家の作品の多くは、脱北者を迎えいれることに焦点を当てる。
プラータナー: 憑依のポートレート、ウティット・ヘーマムーン、2017年、タイ
絡み合う政治とエロス。タイの現代史を、ある芸術家の性愛遍歴を通して語る。プラータナーとはタイ語で「欲望」の意味。2009年『ラップレー、ケンコーイ』(2023年時点で未邦訳)で東南アジア文学賞を受賞した作者の初邦訳作品。
ミルクマン、アンナ・バーンズ、2018年、北アイルランド
舞台は1970年代終わりの北アイルランド。謎の牛乳配達人はテロリストなのか?国家独立をめぐるテロと性的抑圧を生きる18歳女性の不安と絶望を描いた物語。2018年ブッカー賞受賞。2020年国際ダブリン文学賞受賞。
コスタリカ選詩集―緑の祈り、カルロス・フランシスコ・モンヘ、2019年和訳版刊行、コスタリカ
コスタリカの現代詩を代表する1人の作者によるアンソロジー。自然豊かな平和国家として名高い同国の詩人たちが印してきた詩の百年の軌跡をたどる。
アルタイの片隅で、李娟、2021年和訳版刊行、新疆ウイグル自治区
作者の母親が中国アルタイの遊牧地域で開いた裁縫店兼雑貨店にやって来る人々や同地域での生活を描いた物語。中国最高の文学賞、魯迅文学賞受賞作家の若き日の作品集。
蝶男:エストニア短編小説集、メヒス・ヘインサー、2022年和訳版刊行、エストニア
エストニアの新世代作家による短編小説集。フランス語、ドイツ語など、英語以外にも数多くの言語に作品が翻訳され、エストニア国外の読者からも大きな支持を得ている。
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