スコット・フィッツジェラルドの全長編&短編集を原書で読んだ感想・考察

スコット・フィッツジェラルド_全長編&短編集 アメリカ

この記事は、スコット・フィッツジェラルドさんの長編全5作と短編集全4作を、原書で読んだ感想・考察を整理したものです。

感想・考察の根拠には、スコット・フィッツジェラルドさんのエッセイや手紙、ヘミングウェイさんの視点、並びに映画、ドラマ、英語版Wikipediaなどを利用しました。

各作品の前に、スコット・フィッツジェラルドさんの概要と特徴10選をまとめたので、こちらも参考になれば幸いです。

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スコット・フィッツジェラルドの概要と特徴10選

概要:アメリカ文学を代表するジャズエイジの作家

スコット・フィッツジェラルドさん(1896~1940)は、代表作『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』でその地位を決定づけた、アメリカ文学を代表する作家です。

アメリカのバブル期でRoaring Twenties(狂騒の20年代)と呼ばれたこの時代は、スコット・フィッツジェラルドさんの造語「ジャズエイジ」という言葉で呼ばれ、自身の言葉が時代の名前になるほどの成功を収めていました。

スコット・フィッツジェラルドさんの人生の浮沈は、奇しくもアメリカのバブルと重なっており、1920年代の輝きは1930年代以降失われてしまいます。

特徴1:富裕層へのコンプレックス

a poor boy in a rich town; a poor boy in a rich boy’s school; a poor boy in a rich man’s club at Princeton.
裕福な街の貧しい少年、富裕層の少年が通う学校の貧しい少年、プリンストン大学のお金持ち男性クラブの中の貧しい少年。
poor boys shouldn’t think of marrying rich girls.
貧しい少年はお金持ちの少女との結婚を考えるべきではない。

上記は英語版wikipediaからの引用です。1つ目はスコット・フィッツジェラルドさんの幼少期から青春期までの端的な要約として、2つ目は初恋の相手の父親に実際に言われた言葉として重要だと思います。

なぜなら、階級の異なる者同士の恋という設定は、その後の長編、短編で頻出することになるからです。

特徴2:妻ゼルダからの影響

Well-Behaved Women Seldom Make History.
お行儀がよくても歴史は作れない。

これはLaurel Thatcher Ulrichさんの言葉かつ本のタイトルにもなっている有名な言葉で、妻ゼルダさんの特徴を端的に表しています。

ゼルダさんはいわゆるパリピでネタの宝庫のような女性でした。髪型をボブにし(当時は非常識)、スカートの丈も短くし、親世代の「女らしさ」という価値観をぶち壊していきます。ゼルダさんを筆頭にした「新しい女性」たちは「フラッパー」と呼ばれます。女性参政権が付与されたのもこの時期で1920年のことでした。

スコット・フィッツジェラルドさんは、そんなゼルダさんとのエピソードを使い、ゼルダさんをモデルにヒロインを書き、時にはゼルダさんの手紙や日記をそのままパクって書きました。

スコット・フィッツジェラルドさんにとって、ゼルダさんは創作のインスピレーションの泉となる、ミューズのような存在だったようです。

「ゼルダなしのスコットなんて、山葵のない寿司みたいなもの」とマックでJKが言っていたとかいないとか。

特徴3:史上最高の小説と永遠の愛

Twenty-three-year-old Scott, an overnight celebrity, told the press that his greatest ambitions were to write the best novel that ever was and to stay in love with his wife forever.
(デビュー作が大ヒットし)一夜にしてスターになった23歳のスコットは、記者たちに彼の最大の野望を語った。それは、史上最高の小説を書くこと、そして愛する妻(ゼルダ)と添い遂げること。

スコット・フィッツジェラルドさんは、ただプロの作家として成功したいだけではなく、史上最高の小説を書くという巨大な野望を持っていました。

しかし、こんなに大きな野望の話をしているときでも、妻ゼルダさんのことは忘れていません。このことから、妻ゼルダさんもスコット・フィッツジェラルドさんにとってとても大切な人であったことが伺えます。

I love her, and that’s the beginning and end of everything.
私は彼女(妻ゼルダ)を愛している。そのことが全ての始まりであり、全ての終わりだった。

これは1920年(ゼルダさんとの結婚前)、スコット・フィッツジェラルドさんが友人に書いた手紙の一文です。

「特徴2:妻ゼルダからの影響」とも関連しますが、スコット・フィッツジェラルドさんを語るとき、妻ゼルダさんの存在は欠かせません。

特徴4:一流の知性

The test of a first-rate intelligence is the ability to hold two opposed ideas in the mind at the same time, and still retain the ability to function.
一流の知性とは、相反する2つのアイデアを同時に持ちながら、その両方を機能させる能力のこと。

これはスコット・フィッツジェラルドさんが1936年に発表したエッセイ『壊れる(The Crack-Up)』からの引用です。

この説の真偽はさておき、3rd長編『グレート・ギャツビー』の悲劇性と喜劇性、『ラスト・タイクーン(The Last Tycoon)』の光と闇など、相反する二面性を共存させる手法は、スコット・フィッツジェラルドさんの作風の特徴と言えると思います。

特徴5:資本主義への嫌悪と自己矛盾

(略)It’s the best panacea I understand.(略)I’m unwell of a device in which the richest man gets the maximum stunning lady if he desires her, where the artist without an income has to sell his abilities to a button producer.(略)My function couldn’t be worse A social revolution may land me on top.
(略)社会主義が僕の知る限り唯一の解決策です。(略)一番の金持ちが望めば一番綺麗な子を手に入れられる。収入のない芸術家が才能をボタン業者に売らなければならない。そんな世の中の制度にはうんざりです。(略)僕の立場はもうこれ以上悪くなりようがありません。社会革命が起きれば、僕は頂点に立てるかもしれません。

スコット・フィッツジェラルドさんは1st長編『楽園のこちら側(This Side of Paradise)』で、明らかに自身をモデルとしている主人公に社会主義を主張させ、まだ売れる前、自分が弱者のときは(おそらくは嫉妬込みで)資本主義を批判します。

しかし、1st長編『楽園のこちら側』が大ヒットして大金を手にすると、妻ゼルダさんとともに(古いタイプの)ロックスター的なド派手な豪遊生活を送ります。

これを前述の二面性とするには都合が良すぎるので、ここでは自己矛盾とすることとして、この点もスコット・フィッツジェラルドさんの特徴としては無視できないところです。

特徴6:文壇への侵略者

富裕層へのコンプレックスを持ち、資本主義を嫌悪するスコット・フィッツジェラルドさんは、1st長編『楽園のこちら側』で若者達から絶大な支持を受け、時代の寵児へと成り上がります。また、スコット・フィッツジェラルドさんの文体は良くも悪くも今までにない新しいスタイルでした。

しかし、この状況は保守層からすると面白くありません。英語版wikipediaには「outstanding aggressor(傑出した侵略者)」「a number of social conservatives later rejoiced when he died(多くの社会保守層はスコット・フィッツジェラルドが死んだとき喜んだ)」という記載があります。

また、1st長編『楽園のこちら側』は独特の文体で物議を醸し、保守層にとっては面白くなかったかもしれません。この文体については、以下の記事にまとめました。

楽園のこちら側:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルドデビュー作)
『楽園のこちら側(This Side of Paradise)』は、1920年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの1st長編(デビュー作)です。狂騒の20年代前夜、スコット・フィッツジェラルドさんのデビュー作は、戦争に人生を壊され、親世代の価値観に懐疑的になった若者に刺さり大ヒットしました。スコット・フィッツジェラルドさんはこの一冊で時代の寵児へと成り上がります。
特徴7:執念で書き続けた作家

I don’t think I’ve got any real genius. But if I keep trying I may write a good book.
自分にほんとうの才能があるとは自分でも思わないんだ。しかし、努力をつづければ、いい作品が書けるかもしれない。

In any case you mustn’t confuse a single failure with a final defeat.
とにかくたった一つの失敗で、永久に敗北だなどと思いちがいしてはいけません。

これらは4th長編『夜はやさし(Tender Is the Night)』からの引用です。

1つ目は、妻ニコルの不倫相手と決闘するアル中の作家の台詞で、同じくアル中のスコット・フィッツジェラルドさんの気持ちを代弁させているように思います。

2つ目は主人公ディック・ダイバーの台詞で、主人公という重要なキャラに言わせていることから、スコット・フィッツジェラルドさんの主張が表れているように思います。

客観的に見ればスコット・フィッツジェラルドさんは才能のある作家だと思いますが、生前の売り上げは(特に自信作3rd長編『グレート・ギャツビー』以降)不調だったためか、本人は自分に才能があるとは思っていなかったようです。

(本人的に)才能がなくても、売れなくても、あきらめないで書き続ける執念。私が思うスコット・フィッツジェラルドさんの本質かつ一番好きなところです。

特徴8:悲劇的な実体験を元に書くタイプ

スコット・フィッツジェラルドさんの人生は悲劇的です。まず、中流階級出身で上流階級の娘に恋をするも階級差を理由に失恋します。

次に、デビュー作の大ヒットで成り上がったのも束の間、その後は売上が振るわず、常に金不足に悩まされます。

そして、スコットさんはアルコール中毒、最愛の妻ゼルダさんは統合失調症になり、最終的に自身は心臓発作で、妻は病院の火事で焼死します。

スコット・フィッツジェラルドさんは実体験を元に書くタイプでした。妻ゼルダさんとのエピソードはもちろん、同時代の事件や人物を元ネタに小説を書き、ひどいときは妻ゼルダさんの手紙や日記からパクって書く。

悲劇的な人生を元ネタに、実体験ベースで書く。その結果、スコット・フィッツジェラルドさんの作品はほとんどがバッドエンディングの悲劇になります。

特徴9:高く跳んで墜落したイカロス

Then wear the gold hat, if that will move her;
If you can bounce high, bounce for her too,
Till she cry “Lover, gold-hatted, high-bouncing lover,
I must have you!”
—Thomas Parke D’Invilliers
もしそれが彼女を喜ばせるのであれば、黄金の帽子をかぶるがいい。
もし高く跳べるのであれば、彼女のために跳べばいい。
「愛しい人、黄金の帽子をかぶった、高く跳ぶ人、あなたをわたしのものにしなくては!」
と彼女が叫んでくれるまで。
—トーマス・パーク・ダンヴィリエ

これは3rd長編『グレート・ギャツビー』のエピグラフです。

スコット・フィッツジェラルドさんもギャツビーも、高く跳ぼうとして、実際に高く跳べたけど、それを維持できずに墜落。ギリシャ神話のイカロス(蝋燭の翼が溶けて墜落)とも重なって、作者の人生と『グレート・ギャツビー』が神話のようにも感じられます。

スコット・フィッツジェラルドさんもギャツビーもすごくイノセントで、両者の結末も悲劇的で、現代人の私達にはリアリティーがないのですが、だからこそ別格み、神話みを感じ、それこそがスコット・フィッツジェラルドさんが未だに多くの読者を惹きつける理由の1つなのかもしれません。

スコット・フィッツジェラルさん本人は『マイ・ロスト・シティー(My Lost City)』というエッセイで「mirage(蜃気楼)がlost」したと嘆いており、蜃気楼という表現からも神話に似たイメージを想起させられます。

ちなみに、『グレート・ギャツビー』のエピグラフを書いたトーマス・パーク・ダンヴィリエは、1st長編『楽園のこちら側』に登場する架空の作家です。村上春樹さんがデビュー作『風の歌を聴け』をデレク・ハートフィールドという架空の作家の言葉で始めたことの元ネタかもしれません。

特徴10:幸せで美しい死

<1935年、スコットから友人への手紙>
And I wouldn’t mind a bit if in a few years Zelda + I could snuggle up together under a stone in some old graveyard here. That is really a happy thought + not melancholy at all.
数年以内にゼルダと寄り添い一緒にどこかの古い墓に入ることになっても少しも気にならない。それはとても幸せな考えで、全くメランコリーではない。
<1919年、ゼルダからスコットへの手紙>
Isn’t it funny how, out of a row of Confederate soldiers, two or three will make you think of dead lovers and dead loves—when they’re exactly like the others, even to the yellowish moss?
北軍兵士の一列に並んだ墓のうち、黄色い苔までその他と全く同じなのに、その中の2つか3つが死んだ恋人達と死んだ恋達を思い起こさせるなんて、面白くない?
Old death is so beautiful—so very beautiful—We will die together—I know— Sweetheart—
古い死はとても美しい、とっても美しい、私達は一緒に死ぬのよ、そうだよね、愛しい人

スコット・フィッツジェラルドさんも妻ゼルダさんも、客観的には悲劇的な人生を歩み、悲劇的な死を遂げていますが、これらの手紙から本人達は、一緒に死ねるならそれは幸せなこと、美しいこと、と考えていたようです。現在2人は同じお墓で一緒に眠っています。

奇しくも、特徴3で引用したスコット・フィッツジェラルドさんの夢「史上最高の小説を書き、愛する妻(ゼルダさん)と添い遂げる」の後者は達成していたのですね。

前者は、万人が納得する「史上最高」の定義がないですし、歴史上の全作品の頂点に君臨する一冊を書くのはハードルが高すぎるので、one of the best novels ever(史上最高の作品群の中の一冊)と言い換えることとして、3rd長編『グレート・ギャツビー』はその一冊になっていると個人的には思います。

スコット・フィッツジェラルドの全長編&全短編集

1st長編:This Side of Paradise 楽園のこちら側(1920年)

Seek pride where discover it for to-morrow die.
明日死んでもいいように快楽を求めろ。

A social revolution may land me on top.
社会革命が起きれば僕は頂点に立てるかもしれません。

I’m in love with change and I’ve killed my sense of right and wrong.
僕は変化に酔いしれ、そして自分の良心を葬ったのです。

狂騒の20年代前夜、スコット・フィッツジェラルドさんのデビュー作は、戦争に人生を壊され、親世代の価値観に懐疑的になった若者に刺さり大ヒットしました。スコット・フィッツジェラルドさんはこの一冊で時代の寵児へと成り上がります。

英語版Wikipediaに「aggressor(侵略者)」「死んだとき保守派が喜んだ」と書いてあるので、親世代への反発や金持ち/既得権益層に喧嘩を売る感じが若者に受けたのかもしれません。

でもこれが売れて名作『グレート・ギャツビー』が売れないのはどうなのか?売れるためには作品の質より共感(時代の空気に合うこと)が大事という事例かもしれません。

ちなみに『楽園のこちら側』の売上は約5万部、収入は現在の価値で約1000万円、これだけで豪遊を続けるには不十分な金額だったようです。

『楽園のこちら側』については以下の記事にまとめました。感想・考察の内容は下記のとおりです。

  • 楽園のこちら側とは具体的にどこのこと?
  • 英語の難易度は最高レベルに難しい
  • 村上春樹さん『風の歌を聴け』との類似性?
楽園のこちら側:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルドデビュー作)
『楽園のこちら側(This Side of Paradise)』は、1920年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの1st長編(デビュー作)です。狂騒の20年代前夜、スコット・フィッツジェラルドさんのデビュー作は、戦争に人生を壊され、親世代の価値観に懐疑的になった若者に刺さり大ヒットしました。スコット・フィッツジェラルドさんはこの一冊で時代の寵児へと成り上がります。

1st短編集:Flappers and Philosophers フラッパーと哲学者(1920年)

※対応する日本語版はありません。評価の高い『氷の宮殿(The Ice Palace)』は、この新潮文庫版に収録されています。

『楽園のこちら側』の大ヒットで時代の寵児に成り上がった後に発売された短編集。

上記デビュー作の大ヒットにより、今まで短編を不採用にしていた出版社が手のひら返し、単価もアップ。

レビューは賛否あったものの、勢いに乗って引き続き大ヒット。スコット・フィッツジェラルドさんと妻ゼルダさんがド派手に豪遊するための資金源になりました。

しかし、史上最高の小説を書きたいスコット・フィッツジェラルドさんにとって、短編はお金の為の売春(本人の言葉)という認識だったようです。本短編集の中にtrash(=ゴミ[本人の言葉])も混ざりつつ、その中に光る作品があることを流石と言うべきでしょうか。

これが売れて『グレート・ギャツビー』が売れないのは納得がいきません。売れる=良い作品ではないことがよくわかる一例だと思います。

フラッパーと哲学者(氷の宮殿を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド1st短編集)
『フラッパーと哲学者(Flappers and Philosophers)』は、1920年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの1st短編集です。大ヒットした1st長編『楽園のこちら側』に続き、本作も大ヒットしました。

2nd長編:The Beautiful and Damned 美しく呪われた人たち(1922年)

Things are sweeter when they’re lost. I know—because once I wanted something and got it. It was the only thing I ever wanted badly, Dot. And when I got it, it turned to dust in my hands.
失ったものは美しい。欲しかったものを手に入れたからわかる。本当に欲しかったのはひとつだけだったよ、ドット(女性の名前)。でもつかみ取ったら手の中で灰と化した。

『美しく呪われた人たち(The Beautiful and Damned)』はスコット・フィッツジェラルドさんの2nd長編です。

前作は時代を動かす衝撃がありましたが、小説としては問題があり批判もされました。今作では改善が見られ完成度は上がりましたが、衝撃は失われてしまいました。難しいものですね。そんなことはお構いなしに売上は引き続き好調だったそうです。

明らかに名作の『グレート・ギャツビー』が売れず、明らかに劣る前2作が売れるって、大衆が間違えることの典型的な事例ですね。

『美しく呪われた人たち』については以下の記事にまとめました。感想・考察の内容は下記のとおりです。

  • 作者も満足していない作品
  • いつだって物事を悲劇的に見る人
  • 悪役が生き残る結末、そして次作へ
美しく呪われた人たち:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルド2nd長編)
『美しく呪われた人たち(The Beautiful and Damned)』は、1922年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの2nd長編です。前作は時代を動かす衝撃がありましたが、小説としては問題があり批判もされました。今作では改善が見られ完成度は上がりましたが、衝撃は失われてしまいました。売上は引き続き好調だったそうです。

2nd短編集:Tales of the Jazz Age ジャズエイジの物語(1922年)

※対応する日本語版はなく、↓は『Tales of the Jazz Age』と1対1で対応した和訳版ではありません。
評価の高い『リッツ・ホテルほどもある超特大のダイヤモンド(The Diamond as Big as the Ritz)』『メイ・デイ(May Day)』は、この岩波文庫版に収録されています。
有名な『ベンジャミン・バトン 数奇な人生(The Curious Case of Benjamin Button)』は、この角川文庫版に収録されています。

大ヒットした2nd長編『美しく呪われた人たち』の約半年後に出版された短編集。

「ジャズエイジ」という時代の名前は、この短編集が由来だそうです。表紙からスコット・フィッツジェラルドさんと妻ゼルダさんがやりたい放題に豪遊していた狂騒の20年代の雰囲気が伝わってきます。

ニューヨークのセレブの仲間入りを果たした二人は、アルコールを燃料にドンチャン騒ぎをし、バルチモアホテルなどの高級ホテルを追い出されてしまいます。やがて夫婦仲も悪くなり、お金もなくなり…。

本当は長編が書きたいところですが、スコット・フィッツジェラルドさんは生活維持の為に短編執筆という売春行為(本人の言葉)を続けます。

ジャズ・エイジの物語(メイ・デイ、リッツ・ホテル~を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド2nd短編集)
『ジャズ・エイジの物語(Tales of Jazz Age)』は、1922年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの2nd短編集です。「ジャズ・エイジ」という時代の名前は、この短編集から生まれたため、時代を作った短編集と言っても過言ではないでしょう。

3rd長編:The Great Gatsby グレート・ギャツビー(1925年)

“They’re a rotten crowd,” I shouted across the lawn. “You’re worth the whole damn bunch put together.”
「あいつら全員腐ってる」ボクは芝生越しに叫んだ「クズども全員を足して君1人と同じ価値だ(君はそれくらいグレートだ)」

『グレート・ギャツビー』はスコット・フィッツジェラルドさんの3rd長編です。

アメリカ文学史上のみならず、世界文学史上においても超名作に列され、スコット・フィッツジェラルドさんの地位を不動のものとしました(発売当時は売れませんでしたが…)。

でもちょっと待ってください。前2作はそうでもなかったのに、突然ここで超名作が爆誕することに、違和感がありませんか?前2作を書く作家ならこんなの書けないはずだし、これを書ける作家なら前2作なんか書かないはず。どゆこと?

その答えは『グレート・ギャツビー』が超名作と評価される理由と繋がっているはずで、私はその謎を解き明かそうと試みました。

『グレート・ギャツビー』については以下の記事にまとめました。感想・考察の内容は下記のとおりです。

  • ジェイ・ギャツビーの名前が持つ意味とは?
  • トムがロックフェラー似の男からマートルに買ってあげた犬は何故10ドルなのか?
  • Carelessな人とCarefulな人
  • グレートギャツビーが下敷きにしている作品(闇の奥、トリマルキオの饗宴)
  • グレート・ギャツビーが超名作な4つの理由
  • 映画 グレート・ギャツビー
グレート・ギャツビー:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルド3rd長編)
『グレート・ギャツビー』は、1925年に発売されたスコット・フィッツジェラルドさんの3rd長編です。アメリカ文学史上のみならず、世界文学史上においても超名作に列され、スコット・フィッツジェラルドさんの地位を不動のものとしました(発売当時は売れませんでしたが…)。

3rd短編集:All the Sad Young Men 若者はみな悲しい(1926年)

『若者はみな悲しい(All the Sad Young Men)』は3rd長編『グレート・ギャツビー』の翌年に発売され3rd短編集です。

スコット・フィッツジェラルドさんの長編と短編集は、それぞれ1st, 2nd, 3rd, 4thが同時期に書かれ、短編は長編の練習の場でもあり、この3rd短編集にはギャツビークラスターと呼ばれる以下の短編を収録しています。

  • リッチ・ボーイ(The Rich Boy)
  • 冬の夢(Winter Dreams)
  • 赦免(Absolution)
  • 常識(The Sensible Thing)

3rd長編『グレート・ギャツビー』の絶好調ぶりはこの3rd短編集にもあり、次作(4thかつ最後の)短編集を含めても、この3rdはスコット・フィッツジェラルドさんの最高の短編集だと思います。本短編集はセールスも良かったようです。

若者はみな悲しい(リッチ・ボーイ、冬の夢を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド3rd短編集)
『若者はみな悲しい(All the Sad Young Men)』は、1926年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの3rd短編集です。本作には『The Rich Boy リッチ・ボーイ』や『Winter Dreams 冬の夢』など評価の高い作品も収録されています。

4th長編:Tender Is the Night 夜はやさし(1934年)

he must be less intact, even faintly destroyed.
もっと傷をうけ、ちょっとはこわれたところがあってしかるべきだ。

He knew, though, that the price of his intactness was incompleteness.
もっとも自分の不完全さは傷をうけたことがないためだと、ちゃんと承知してはいた。

『夜はやさし(Tender Is the Night)』はスコット・フィッツジェラルドさんの4th長編です。アメリカのバブルが弾け、妻ゼルダさんは統合失調症、自分はアル中、社会も私生活も崩壊中に書かれました。

いつも通り、今作もバッドエンディングの悲劇です。スコット・フィッツジェラルドさんは人生そのものが悲劇的で、実体験を元に書くタイプなので、作品は自動的に悲劇になります。

今作の新しい点は、作品の舞台がニューヨークからフランスのリゾート地リヴィエラに移ったこと。ニューヨークはさんざん擦ってきたところなので、私としてはこの変化は大歓迎です。

4th長編『夜はやさし』の元ネタになったエピソードは、ゼルダさんも自身初の小説『Save Me the Walts』で使っており、二人のエピソードをどちらが使うかで喧嘩が勃発。最終的にはスコット・フィッツジェラルドさんの主張が通り、ゼルダさんは重複部分を削除することになります。

『夜はやさし』については以下の記事にまとめました。感想・考察の内容は下記のとおりです。

  • オリジナル版と改訂版
  • 『グレート・ギャツビー』と『夜はやさし』の違い
  • 2種類の崩壊
夜はやさし:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルド4th長編)
『夜はやさし(Tender Is the Night)』は、1934年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの4th長編です。アメリカのバブルが弾け、妻ゼルダさんは統合失調症、自分はアル中、社会も私生活も崩壊中に書かれました。いつも通り、今作もバッドエンディングの悲劇です。

4th短編集:Taps at Reveille(1935年)

※対応する日本語版はありません。評価の高い『Babylon Revisited バビロン再訪』は↓に収録されています。

スコット・フィッツジェラルドさんの4thかつ最後の短編集。4th長編『夜はやさし』と同じく崩壊期に書かれました。有名な『バビロン再訪(Babylon Revisited)』は本短編集に収録されています。

この時期、スコット・フィッツジェラルドさんはアルコール中毒、妻ゼルダさんは統合失調症、相変わらずの金欠で、明らかな崩壊期でした。スコット・フィッツジェラルドさんは1936年に『壊れる(The Crack-Up)』というエッセイも発表しています。

また、この時期のスコット・フィッツジェラルドさんの様子は、アーネスト・ヘミングウェイさんの『移動祝祭日(A Movable Feast)』の中でも触れられています。

Taps at Reveille(バビロン再訪を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド4th短編集)
『Taps at Reveille』は、1935年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの4th短編集です。評価の高い『バビロン再訪』や、次作5th長編『ラストタイクーン』と同じくハリウッドを舞台にした『狂った日曜日』は特におすすめです。

5th長編:The Last Tycoon ラスト・タイクーン(1941年)

They were smiling at each other as if this was the beginning of the world.
2人は世界の創生かと思われるような微笑をかわしあった。

『ラスト・タイクーン(The Last Tycoon)』はスコット・フィッツジェラルドさんの5th長編です。崩壊期のエッセイ『壊れる』(1936年)の後に書かれ、結果として最後かつ未完の長編となってしまいました。

自信作の3rd長編『グレート・ギャツビー』も4th長編『夜はやさし』もあまり売れませんでしたが、執念の作家スコット・フィッツジェラルドさんはあきらめません。

史上最高の小説を書く(そして愛するゼルダさんと添い遂げる)という夢に向かい、本作『ラスト・タイクーン』を書きます。もうこれだけで胸熱です。

『ラスト・タイクーン』については以下の記事にまとめました。感想・考察の内容は下記のとおりです。

  • まだ言い残していたこととは?
  • 最高傑作?
  • 創作ノートは必見
  • さらに詳しく
ラスト・タイクーン:あらすじ、原書で読んだ感想・考察(スコット・フィッツジェラルド5th長編、未完)
『ラストタイクーン(The Last Tycoon)』は、1941年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの5th長編です。崩壊期のエッセイ『壊れる(The Crack-Up)』(1936年)の後に書かれ、結果として最後かつ未完の長編となってしまいました。

ベスト短編集:Babylon Revisited & Other Tales(1960年)

※対応する日本語版はありませんが、収録作品の被りが一番多いのは岩波文庫版です(5/6作で一致)

スコット・フィッツジェラルドさんの死後に出版されたベスト短編集。

表題作の『バビロン再訪(Babylon Revisited)』の他に『氷の宮殿(The Ice Palace)』、『冬の夢(Winter Dreams)』、『リッチ・ボーイ(The Rich Boy)』など評価の高い作品を収録。

個人的には『リッツ・ホテルほどもある超特大のダイヤモンド(The Diamond As Big As the Ritz)』と『狂った日曜日/クレイジーサンデー(Crazy Sunday)』も好きです。

岩波版のセレクションはとても私好みで、選んだ人と気が合いそうだなと思っています。厳密に言うと、May Dayアウト、The Ice Palaceインだったら好みが完全一致だったとこだけ惜しいですが、好きな作品が5/6も一致しているので十分に満足のセレクションです。

『The Long Way Out』は1st〜4th短編集未収録なので、以下に簡単にご紹介。

The Long Way Out

キング婦人は第二子出産後に統合失調症になってしまったが今は回復期でリハビリの一環の旅行を楽しみにしている。出発の朝、迎えに来るはずの夫が交通事故で危篤状態に(まだ死んでない)折角回復してきた患者にこの事を伝えるべきか否か医師達は迷う…

おすすめの短編集

スコット・フィッツジェラルドさんにとって短編は生活費を稼ぐための売春(本人の言葉)で仕方なく書いていたからか、良い作品とtrash(ゴミ[本人の言葉])が混在しています。

ガチりたい人は順番にオリジナル版を読んで行くのもいいと思いますが、そうじゃない人は良い作品を厳選しているベスト版がおすすめです。

日本語版だと私の個人的おすすめは↑の岩波文庫版ですが、↓の新潮文庫版もいいと思います。

スコット・フィッツジェラルドに関連する本・ドラマ

この記事を書くにあたり、以下の本とドラマを参考にしました。

特にエッセイは読みやすさからも内容的にもおすすめです。

アマゾンプライムドラマの2作も気軽に楽しめるコンテンツとしておすすめです。

エッセイ:My Lost City & Other Autobiographical Essays

※対応する日本語版はありません。表題作『マイ・ロスト・シティー(My Lost City)』は↓に収録されていますが、英語版との重なりはこの1作品のみです。
英語版の収録作品は村上春樹さん訳のエッセイ及び短編集『ある作家の夕刻』に網羅されています(My Generationは除く)。

『My Lost City & Other Autobiographical Essays』はスコット・フィッツジェラルドさんのエッセイを7編収録しています。中でも表題作の『マイ・ロスト・シティー(My Lost City)』は作者や時代背景を理解するうえでとても重要な作品です。

その他のエッセイもほとんどは、バブルが弾け、自信作の3rd長編『グレート・ギャツビー』も売れず、失意の1930年代に発表されたもの。

どれも内容が暗いですが、This is スコット・フィッツジェラルドという特徴が感じられるエッセイ集になっています。

マイ・ロスト・シティー、ある作家の夕刻(スコット・フィッツジェラルドのエッセイ)
『マイ・ロスト・シティー』は、1940年に44歳で亡くなったスコット・フィッツジェラルドさんのエッセイ集です。『マイ・ロスト・シティー』に収録されているエッセイのほとんどは、この『ある作家の夕刻』に収録されています。

手紙集:Dear Scott, Dearest Zelda

スコット・フィッツジェラルドさんと妻ゼルダさんの手紙集です。大量の手紙に圧倒されて迷子にならないよう、人生の各時期の解説もあったのには助けられました。

スコット・フィッツジェラルドさんがゼルダさんの才能に嫉妬し、自分を超えないよう専業主婦でいるように抑圧したからゼルダさんは統合失調症になったのか?

ゼルダさんの浪費癖や統合失調症が原因でスコット・フィッツジェラルドさんはアル中になったのか?

その方が伝説的作家の人生としてイージーにネタ化できるけど、根拠がないから採用はできないし、推測で人のworst versionを作るのはよくない。

それよりも、記録が残っていて根拠として採用できるのがこれらの手紙集です。スコット・フィッツジェラルドさんはゼルダさんの執筆をサポートしているので、スコット・フィッツジェラルドさんの嫉妬説は可能性が低そうです。それに、ゼルダさんに最高の治療を受けさせるために高額の治療費を払い続けたのは凄い。手紙からも愛が伝わってくる。そこまで愛した人の可能性を潰していたとは考えにくいと思いました。

これらの手紙を読むことで、他人からのレッテルを貼られていない、本人達の真実が見えてきます。スコット・フィッツジェラルドさんはアルコール中毒、ゼルダさんは統合失調症、お金もない。表面的には崩壊期に見える時期でさえ、二人の手紙からは、お互いに愛し合っていること、死を恐れていないこと、幸せなことが伝わってきます。個人的にはここが一番の発見でした。

アーネスト・ヘミングウェイ:A Moveable Feast 移動祝祭日(1964年)

Stein: All of you young people who served in the war. You are a lost generation.
Hemingway: But the hell with her lost-generation talk and all the dirty, easy labels.
スタイン:こんどの戦争に従軍したあなたたち若者はね。みんな自堕落な世代(ロスト・ジェネレーション)なのよ。
ヘミングウェイ:でも、ロスト・ジェネレーションなんて彼女の言い草など、くそくらえ。薄汚い、安直なレッテル貼りなどくそくらえだ。

アーネスト・ヘミングウェイさんのパリ時代の回想録。ロスト・ジェネレーションという言葉の元ネタになった上記エピソードが収録されていることでも有名です。本作にフランス時代のスコット・フィッツジェラルドさんが登場します。

ヘミングウェイさんとフィッツジェラルドさんの出会いは、自信作『グレート・ギャツビー』の発売後で、あまり売れなかったけど批評家の評価は良かったという時期。フィッツジェラルドさんは酒に呑まれて(多分アル中)、待ち合わせに遅刻して、旅先のホテルでダル絡みするダメ人間という印象です。

でもヘミングウェイさんは『グレート・ギャツビー』を読んで、人間的な評価はスルーとなり、フィッツジェラルドさんと友達になりたいと思ったようです。

短編を書くことは小説家の売春行為と2人が認識していたことはインパクトが強かったです。フィッツジェラルドさんは本当は長編が書きたいけれど、生活費を稼ぐために短編を書かなければならない。ヘミングウェイさんはそのことにショックを受けます。

ヘミングウェイさんは、フィッツジェラルドさんの妻ゼルダさんのことが嫌いで執筆の邪魔と思っていたようです。ここは、確かに邪魔もしているけど、ゼルダさんがいないとフィッツジェラルドさんは書けないことが、見落とされているように思いました。

さらに語りたいこと
個人的に印象に残ったのは、フィッツジェラルドさんが人生を語ったとき、1回目は悲しかったけど、2回目に小説風に語られたときはあまり悲しくなかった、というくだりです。フィッツジェラルドさんの人生(持ちネタ)が小説化することでパワーダウンするなら、小説家としては真の天才ではなかったのかも?

フィッツジェラルドさんはゼルダさんをモデルにヒロインを書き、ゼルダさんとのエピソードを書き、ゼルダさんの手紙からパクって書いた。1人では書けない。英語を操る能力(楽器の演奏能力)は100点満点だけど、創造力(作曲能力)は100点満点の天才ではなく、妻ゼルダさんに(すべてではないにしろ部分的に)依存していたのかも?

少しフィッツジェラルドさんを下げてしまったけど、そこが好きなところでもあります。才能は運なので才能自体には感動しません。どこかの誰かが宝くじに当たるというだけのシステムです。感動するのは、人間の努力や生き様。100%の天才ではないかもしれないフィッツジェラルドさんが、がんばってがんばってがんばって書き続けた。私はそのことに感動します。

ところで、フィッツジェラルドさんと言えば服装はブルックスブラザーズ(ヘミングウェイさんは本作で「His Brooks Brothers clothes fitted him well」と書いています)。私もブルックスブラザーズが好きで、私服に占める割合も高めで、人に会う時はブルックスブラザーズを着るようにしています。心はフィッツジェラルドさんとともにあります😆

Z: The Beginning of Everything ゼルダ ~すべての始まり~

スコット・フィッツジェラルドさんの妻ゼルダさんの物語です(アマゾンプライムドラマ)。

ゼルダさんはアメリカ南部のアラバマ州、モンゴメリー出身の女性。家は上流階級なので、中流階級出身のスコット・フィッツジェラルドさんにとっては階層差のある恋愛でした。

スコット・フィッツジェラルドさんの人生と作品に多大な影響を与え、ジャズエイジの最初のフラッパーと言われるゼルダさんはどんな女性だったのか?彼女の目線から見えてくるスコット・フィッツジェラルド像とは?

このドラマがどこまでが実話でどこからがフィクションなのかは不明ですが、スコット・フィッツジェラルドさんとその作品をさらに理解したいと思う方にとっては、参考になるドラマです。

あらすじ
E1〜E3の舞台はアメリカ南部のアラバマ州モンゴメリー。陸軍のキャンプで来ていたスコットはここでゼルダに出会い、このエピソードはそのままグレートギャツビーに使われる。スコットは実体験を元に書くタイプ。

E4から舞台はNYへ。スコットはデビュー作『This Side of Paradise 楽園のこちら側』で成り上がる。でもその前の版は1人で書いてrejected。その後ゼルダと出会い影響を受けてリライト、ゼルダの手紙からパクって追記してaccepted。スコットも頑張ったけどゼルダの存在も大きい。スコットはゼルダをNYに呼び結婚。(古いタイプの)ロックスター的なド派手な生活を始める。ゼルダは最初のフラッパー。お行儀が良いだけでは歴史は作れない(Well-Behaved Women Seldom Make History)を体現した人。

スコットはゼルダがいないと書けない。ゼルダはスコットの金がないと豪遊できない。お互いに補完し合う関係。2人で1つのフォース。

E5〜E7は二作目への期待や、今はもう無い高級ホテルのビルトモアホテルへの支払いに追われる(うるさい2人に苦情殺到)。短編を書いて生活費と時間を稼いではいるけど、二作目への重圧でさらに追い込まれる。金持ちが嫌いで喧嘩。ゼルダの浪費癖は止まらない。金がなくなりついにホテルを追い出される。

E8〜E9の舞台はロングアイランド。スコットはニ作目の執筆に集中したい、ゼルダは退屈と家事に耐えられず週末にパーリー(ギャツビーの豪華夜会の元ネタ?)スコットは1人では書けずゼルダの日記が頼みの綱。そのゼルダの日記に出版の話が持ち上がるがスコットは反対、ゼルダのネタは自分が使いたい。

E10(S1最終話)2人の関係を修復する為に2人が出会ったモンゴメリーに車で戻ることに。途中ゼルダの運転で動物(鹿?)を轢いてしまう。グレートギャツビーのデイジーの自動車事故の元ネタ?このドラマどこまでが事実でどこからがフィクションなんだろう?このドラマはS1で打切り😢

The Last Tycoon ラスト・タイクーン

スコット・フィッツジェラルドさんの最後かつ未完の長編小説『ラスト・タイクーン』です(アマゾンプライムドラマ)。

本作は、小説のコアな設定を残しつつ、9割はドラマオリジナルストーリーになっています。ドラマの解釈が絶対ではないけど、そういう発想もあるかと小説を読む上での参考になりました。ハリウッドは光も強いけど闇も深いようで、スコット・フィッツジェラルドらしさを達成しているエグめの悲劇に仕上がっています。S1での打切りが残念😢

『ラスト・タイクーン』の小説とドラマの違いについて、小説もスコット・フィッツジェラルドさんのいつもの悲劇なんだけど、創作ノートの計画を見る限り、仮に完成しても『グレート・ギャツビー』ほどはエグくはならないと思いました。でもこのドラマはギャツビークラスのエグい悲劇になっています。光が強いほど影が濃くなって、それがエグさになる。フィクションだけどハリウッド怖い…

『ラスト・タイクーン』は光と影、『グレート・ギャツビー』は悲劇と喜劇。相反する二つの要素を対比させることでエグさを演出するというのは、よくある手法なのかもしれませんが、わかっていてもやられてしまいます。数学の公式が持つ絶対性の様に…🤣

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