ティファニーで朝食を:あらすじ・登場人物・原書で読んだ感想・考察 トルーマン・カポーティ

ティファニーで朝食を:あらすじ・登場人物・原書で読んだ感想・考察 アメリカ

『ティファニーで朝食を』の概要

『ティファニーで朝食を』とは?

ティファニーで朝食を_トルーマン・カポーティ

  • 原題:Breakfast at Tiffany’s
  • 作者:トルーマン・カポーティ
  • 発表:1958年
  • 時代:第二次世界大戦が始まって間もない頃
  • 場所:ニューヨーク(アッパーイースト70丁目あたりが中心)
  • 長さ:中編小説(日本語文庫本で約160ページ)
  • 内容:作家志望の青年(僕)と女優の卵(ヒロイン、ホリー)を中心とした物語。
  • 評価:20世紀アメリカ文学を代表する名作。
  • 映画:オードリー・ヘプバーン主演による映画も有名(ただし原作と違うところあり)。

『ティファニーで朝食へ』はここがおすすめ!

  • 長くないので、気軽に読める。
  • 王道を行く設定がわかりやすい(自由奔放なヒロインに振り回される主人公 / 友達以上、恋人未満)。
  • おしゃれな気分になれて、読んでて気分がいい。

『ティファニーで朝食を』のあらすじ

こんなことを言っては元も子もないかもしれませんが、私は『ティファニーで朝食を』を楽しむうえで、物語の筋はどうでもいいと思っています。

それよりも、私が好きで、最も楽しかったのは、ホリーの言動でした。

物語を動かす一次的な要素は、ホリーの(ホームを求める)気持ちであって、それに基づいてホリーの言動が決定していく。

物語の筋がどう進んで行くか、他の登場人物が何をしたかは、ホリーが動いた後の、二次的な結果でしかない。

『ティファニーで朝食を』は、とにかく、ホリー。私はそう思っています。

ただ、それだとブログとして役に立たないので、以下にあらすじを折りたたみました。

必要な方だけご覧いただければと思います。

あらすじ
※『ティファニーで朝食を』には章分けがないため、私なりに9つに分けました。

▼1. 物語の語り手(作家志望の青年、僕)が、ヒロイン、ホリーを回想する

  • 10月の雨の日、僕はレキシントンアヴェニューの角にあるいきつけのバーに呼ばれ、マスターのジョー・ベルから、黒人男性が木彫の彫刻を持っている写真を見せられた。
  • その彫刻はまるでホリーの生き写し。日本人カメラマン、ユニヨシ、がアフリカの村(泥でできた掘っ立て小屋が並ぶ)で撮ったものだと言う。
  • 僕はかつて住んでいたブラウンストーンのアパートメントに寄り、ホリーを知るきっかけになった郵便受けを点検する(ここから僕の回想が始まる)。

▼2. ヒロイン、ホリー登場

  • 僕がニューヨークに引っ越して来て一週間ほどの頃、郵便受けの名札入れに「ミス・ホリデー・ゴライトリー、旅行中」というかわったカードが入っているのが目にとまった。
  • 1階に住むホリーはいつも鍵を忘れ、最上階に住むユニヨシに1階の扉を開けてもらっていた。ある深夜ついにユニヨシが怒った(僕はその様子をこっそりと見ていた)。
  • 日差しの強い日、ホリーはよく非常階段で髪を乾かしながらギターを弾き語っていた(僕は窓際でその歌にそっと耳を澄ましていた)。

▼3. 僕とホリーのファーストコンタクト

  • ある秋の日、バスローブ姿のホリーが、非常階段側から僕の部屋に入って来た。男から逃げるためだった。
  • 僕はホリーに頼まれて、前日に書き上げたばかりの短編小説を朗読するが、退屈そうなホリーを見て読まなきゃよかったと後悔する。
  • ホリーは毎週木曜日、マフィアのボス、サリー・トマトと刑務所で面会し、伝言を受け取るかわりに依頼人から50ドルをもらっているらしい。
  • 語り疲れた深夜、2人は同じベッドで横になる。僕は眠れず、兄のフレッドを想い寝言を言うホリーを見ていた。「のぞき屋って大っ嫌い」

▼4. ティファニーで朝食を

  • ホリーの自宅パーティーに招待され行ってみると、他にも沢山の男が招待されていた。
  • ホリーは時々mean red(※)な気持ちになり、それはティファニー(※)に行くと治まるらしい。
  • パーティーの後、ホリーとマグが避難階段でホセ(マグの彼氏)のことを語り合う。やがてマグはホリーの家に同居する(郵便受けのカードは2人で「旅行中」になる)。

▼5. 僕とホリーの距離が縮まって行く

  • 僕の作品が無償だけど出版されることになり、お祝いでホリーとデートする〔あごくいに始まり、途中で鳥かごを見て(ホリーは僕が欲しがっていると勘違いする)、最後はマスクの万引きでドキドキして終わる〕。
  • 僕は図書館に入っていくホリーを尾行、観察し、ホリーの人間性を考察する(結論、大人への変化を拒む夢想家)。
  • クリスマスのプレゼント交換で、ホリーは僕に鳥かごを、僕はホリーにティファニーで買った聖クリストロフォロスのメダルを贈る。

●鳥かご

自由奔放なホリーは、鳥かごに生き物を入れたくありません。「でも約束してちょうだいね。何があってもこの中に生き物を入れないって」カポーティは、ホリーの性格を引き立てるために、鳥かごを選んだのだと思います。

●聖クリストロフォロスのメダル

聖クリストフォロスとは、旅人の守護聖人のこと。ホリーの住所が「旅行中」だからこそ、このプレゼントなんですね。カポーティの発想は天才的だと思います。

▼6. 僕とホリーが喧嘩する

  • 喧嘩のきっかけは、ホリーが僕の小説を「つまらない」と言ったこと。
  • ホリーの捨て台詞「ここからドアまで歩いてだいたい四秒かかるんだけど、それをきっかり二秒で出て行ってちょうだいね」
  • 僕は鳥かごを捨てることができない。

▼7. ホリーの夫、ドクが登場し、ホリーの過去が明らかになる

  • 僕は夫のドクからホリーの過去を聞く。貧乏でガリガリだったが、目はギラギラしていた。14歳で結婚、家出をしたらしい。
  • 兄のフレッド戦死の電報でホリーが荒れる。ブラジル人外交官ホセの不自由な英語がアイロニーをかもす「悲しみの病気なのですか?」
  • ホリーとホセが同棲を始める。

▼8. ホリーへの告白と、ホリーの逮捕

  • 僕の誕生日、ホリーとの乗馬中に僕の馬が暴走するが、九死に一生を得る。
  • 助かった直後、僕はホリーに告白する「君のことが好きだ」
  • サリー・トマト率いる麻薬売買組織に関与した疑いで、ホリーが逮捕される。外交官のホセは保身のために逃亡する。

▼9. ミス・ホリデー・ゴライトリー、旅行中

  • ホリーの手元には、ホセと乗るはずだったフライトのチケットが残っている。
  • ホリーは、ホセとは別れたけど、せっかくだから、このチケットで、ブラジルに行ってみたい。
  • 保釈の身で国外に出るところを捕まったら刑務所行き、うまく海外に行けても二度と帰国できない。
  • 自分の居場所を探し求めているホリーは、まだ止まれない。
  • 僕は荷づくりを手伝い、ジョーはリムジンを呼び、ホリー逃亡の手助けをする。
  • 旅立ちの日、ホリーは猫を捨てるが、その後で激しく後悔する。
  • その後、僕は猫を見つける。猫は他の家で居場所を見つけていた。
  • ホリーはティファニーのような場所を見つけられただろうか?

『ティファニーで朝食を』の登場人物

僕:物語の語り手/書き手

  • 僕は作家志望の青年(おそらく下積み時代を雑誌The New Yorkerで働いていたカポーティ自身が投影されている)。
  • ニューヨークのアッパーイースト70丁目あたりで、ブラウンストーンのアパートの2階で1人暮らしをしている。
  • 映画では筋肉質、メガネなしだったが、原作からは痩せ型メガネだと思われる。

ホリデー・ゴライトリー:物語のヒロイン(愛称ホリー)

  • 物語のヒロインで、愛称はホリー。僕と同じアパートメントの1階に住んでいる。
  • ニューヨーク社交界で男性セレブに人気がある女優の卵。
  • ホリーが持つ、ホーム(安らげる場所)を探し求める気持ちが、物語を動かして行く。
  • 映画ではオードリー・ヘプバーンが演じたが、原作からはもっとセックスアピールのあるマリリン・モンロー的なキャラだと思われる。
  • ホリーを「娼婦」として紹介するブログ等も散見されるが、小説中にそう断言する記述は一言もない(そのことで寓話性が守られていると思います)。

ジョー・ベル:いきつけのバーのマスター

  • レキシントンアヴェニューの角でバーを経営している。
  • 僕とホリーはよくこのバーに行っていた(目的はお酒ではなく、電話を借りること)。

  • ホリーが飼っている猫だが、お互いに独立していて、お互いに誰のものでもない。
  • ホリーとはある日、川べりで出会った。
  • ホリーと同じく、ホームを探している。

ユニヨシ

  • ブラウンストーンのアパートメントの最上階に住んでいる、日本人カメラマン。
  • 物語は、ユニヨシがアフリカで撮ってきた写真をきっかけに動き出す。

●差別的な表現

映画では日本人を差別するようなキャラクターとして演じられていて、日本人としては見ていて気分が悪くなります。

映画を見るときは、事前に心の準備をしておくのがよいかもしれません。

私たちとしては、外国の人にそういうことをしないようにしよう、と、映画での表現を反面教師にできればいいなと思います。

他にも登場人物はいますが、ひとまずは、重要度の高い、上記4人と1匹にとどめます。

『ティファニーで朝食を』を原書で読んだ感想・考察

『ティファニーで朝食を』のタイトルの意味

“Well, so, tough titty. Anyway, home is where you feel at home. I’m still looking.”

「そう、それはとても残念。でも、ホームとはお家でくつろげるような場所のこと。私はそんな場所を今も探し続けている。」

  • ティファニーは安らげる場所の比喩
  • 朝食はそこを見つけたことの比喩(安らかに寝れる→起きた後そこで朝食が食べれる)

→ ヒロインのホリーは安らげる場所を探し続けてる、っていう物語を動かす力が、このタイトルに凝縮されていて、良いタイトルだと思います。

『ティファニーで朝食を』のテーマ

本作にテーマがあるとしたら、私は「Innocence(純真、純潔)」だと思います。

でも、この「Innocence」は、法的、性的なものではなく、ヒロインのホリーが持つ、「Wild(野生的な)」で、「Eccentric(奇抜な)」な要素も、含んだ上での、「Innocence」。

つまり、「自分の心に正直に、ホーム(安らげる場所)を探し続けること」、そこに対しての「Innocence」というわけです。

ホリーの「Innocence」は「社交界の光と、ホームのない闇」という対比によって、よりいっそう強調されたものとなっています。

ホリー役にもっともふさわしいのは誰?

ティファニーで朝食を_マリリン・モンロー

マリリン・モンロー

小説『ティファニーで朝食を』を書いたトルーマン・カポーティは、映画版のホリー役にはマリリン・モンローが最適と考えていたと言われています(Will The Real Holly Golightly Please Stand Up: Truman Capote Mines His Friendships For Art)。

しかし、『ティファニーで朝食を』の映画版で、ホリー役を演じたのはオードリー・ヘプバーンでした。

すでに多くの人が指摘しているように、小説からイメージするホリーは、オードリー・ヘプバーンのような女性ではないと、私も思います。

ところが、私の頭には、オードリー・ヘプバーンの顔と、歌声と、Moon Riverの曲が、強烈なイメージとして残っている。

本当は違うはずなのに、この存在感は、いったい何なのでしょうか。

『ティファニーで朝食を』好きとして、悔しいけれど、映画、女優、音楽の力を、認めざるを得ません。

『ティファニーで朝食を』を読みながら、ホリーが実在したら、どんな女性なんだろう?

ホリー役を演じる女優として、誰が適役だろう?

と想像しながら読むのも面白いと思います。

ホリー・ゴライトリーは偽物?

“What do you think: is she or ain’t she?”
“Ain’t she what?”
“A phony.”
「あなたはどう思う?彼女はそうなのか、そうじゃないのか?」
「そうって、何が?」
「偽物かどうかってこと」

※phonyは「偽物、まがい物、いんちき、ペテン師、まやかし」という意味。

Holly(ホリー)と Phony(フォニー)、響きが似ているのは気のせいでしょうか。カポーティがわざと Holly という名前にしたのだとしたら、よく考えているなぁと感心してしまいます。

mean redな気持ちとは?

“Listen. You know those days when you’ve got the mean reds?”
聞いて。ほら、たちの悪いレッドのような気持ちになることってあるでしょ?」

「ブルーな気持ち」という表現はよくありますが、ここではmeanという形容詞を伴って「レッドな気持ち」という表現が使われています。

Meanの意味は、ここでは「タチの悪い」と解釈するのが文脈に合うと思います。

「タチの悪いレッドな気持ち」。

ヒロインのホリーが抱えている不安を、このように表現したトルーマン・カポーティさんは天才だと思います。

ティファニーの名刺

I’d been living in the house about a week when I noticed that the mailbox belonging to Apt. 2 had a name-slot fitted with a curious card. Printed, rather Cartier-formal, it read: Miss Holiday Golightly; and, underneath, in the corner, Traveling. It nagged me like a tune: Miss Holiday Golightly, Traveling.

その家(アパート)に住んで約一週間たった頃、2号室の郵便受けの名札入れに、気になるカードが差し込んであった。印刷されていた、予想以上にしゃれた字体で:ミス・ホリデー・ゴライトリー;その下の隅には「旅行中(Traveling)」と書いてあった。それはまるで歌のように私の耳に残った:ミス・ホリデー・ゴライトリー、トラヴェリング

※Cartier-formalは「しゃれた字体」という意味

“After all, how do I know where I’ll be living tomorrow? So I told them to put Traveling.”

「結局のところ、明日私がどこに住んでいるかなんてわからないでしょ?だから彼ら(ティファニー)に(住所のかわりに)旅行中って印刷させたのよ。」

私もホリーみたいにティファニーの名刺がほしくて、ティファニー銀座店に行ってみたことがあるのですが、結果は「名刺は取り扱っておりません」。

「え、小説に書いてあったんですけど、、、」と言っても、ないものはない。この時は、本当にショックでした・・・(苦笑)

ティファニーのメダル

“I’m afraid it isn’t much,” and it wasn’t: a St. Christopher’s medal. But at least it came from Tiffany’s.

「それは大したものじゃない。」実際そうだった:ただの聖クリストフォロスのメダルだ。でも、少なくともそれはティファニーで買ったものだ。

●聖クリストフォロスとは?

旅人の守護聖人。ホリーの住所が「旅行中(Traveling)」だからこその、聖クリストフォロスのメダルなんですね。なんて気の利いたプレゼント!カポーティさん天才!

ちなみに、聖クリストフォロスのメダルもティファニーでのお取り扱いはないとのことでした・・・

乗馬コースをメモ

The stables – I believe they have been replaced by television studios – were on West Sixty-sixth street. 省略 we jogged across the traffic of Central Park West and entered a riding path dappled with leaves feuding breezes danced about. 省略 Onward: across the park and out into Fifth Avenue 省略 Past the Duke mansion, the Frick Museum, past the Pierre and the Plaza.

厩舎は -今ではテレビのスタジオに変わっていると思うけど- ウエストサイドの六十六丁目にあった。省略 私たちはセントラル・パーク・ウエスト通りの車たちをゆっくりと横切り、落ち葉でまだらになった乗馬道路に入った。省略 馬はそのまま前に突進し、公園を横切り、五番街に出た。省略 デューク・マンションを過ぎ、フリック美術館を過ぎ、ピエールとプラザを過ぎた。

これは主人公の僕がヒロインのホリーと乗馬をするシーン。次にニューヨークに行ったら、このコースを歩いてみたいと思っているので、一応メモ。

ちなみに、僕とホリーが乗馬したのは9月30日、僕の誕生日でした。

この記事は以上です。最後までお読みくださりありがとうございました!

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