『日日是好日』とは?
本書はエッセイストの森下典子さんが茶道を軸に綴った自伝的エッセイです。
初版は2002年発行、2018年には映画化もされ、文庫版の解説は人間国宝の落語家、柳家小三治さんが担当し絶賛されています。
日日是好日の読み方は「にちにちこれこうじつ」で、毎日が良い日という意味。雨の日は、雨の匂いを感じ、雨の音を聴く。今この瞬間を生きていることの感動を「茶道」を通じて発見していきます。
もののあはれ
「もののあはれ」とは江戸時代の国学者、本井宣長が提唱した思想で、以下のように説明されるものです。
四季に移ろいゆく風情や男女や親子・友などの間の情愛や離別、哀惜などによって生じる、しみじみとした情緒や気分をあらわす言葉。
『日日是好日』は「もののあはれ」を強調しているわけではありませんが、本書で語られ、筆者が茶道から学んだ生きる喜びを端的に表すなら「もののあはれ」が適切だと思います。
何かと忙しい現代人は、「もののあはれ」を感じることは難しくなっていると思います。逆に考えると、もし今の生活や人生に何らかの欠乏を感じているとしたら、「もののあはれ」がそれを埋めてくれるかもしれません。
「もののあはれ」とは具体的に何か?『日日是好日』は文庫本という手軽さでそれを教えてくれます。
茶道の魅力
世の中には、『すぐわかるもの』と、『すぐわからないもの』の二種類がある
筆者の森下典子さんは上記のように書き、茶道を『すぐわからないもの』に分類しています。
また、茶道の一般的なイメージとしては、「地味」「作法が厳しそう」「むつかしそう」「年寄りがやるもの」「道具にお金をかける金持ちの道楽」など、あまりよいものはないかもしれません。
でも、茶道は楽しくて、本当に魅力的な日本の文化で、ちゃんとやれば必ず人生を豊かにしてくれるものだと思います。
私は『日日是好日』を2000年代に読んで感動し、2023年に久しぶりに再読して、泣きそうになるくらい感動しました。武田のおばさんも、筆者の森下さんも本当に素敵。こんな風に年を重ねて行きたいと思いました。
茶道の和菓子
茶道には、お茶、和菓子、お花、掛軸、茶道具など色々素敵なものがありすぎるのですが、その中でも和菓子はもっともわかりやすく、多くの人によろこんでもらえるものだと思います。
以下に紹介する12の和菓子は、『日日是好日』に登場するものです。どれも本当に素敵で、それぞれの季節にいつか食べてみたいと思わされました。
※番号:①左上②右上③左下④右下
どの季節にどの和菓子を出すか、その和菓子とどのお皿を合わせるか、シンプルな和菓子をどのように美しく魅せるかなど、突き詰めていくと奥深い世界があって、学べば学ほど楽しめると思います(私はまだその境地には程遠いですが)。
でもまあ、最初の入口としては、この和菓子おいしい、見た目が美しい、お皿も素敵など、シンプルに楽しむことでよいのかなと思っています。
茶道教室で学んだこと
私は東京住みだった頃1年ほど茶道習っていたことがあります。今は引越しで辞めてしまったのが心残りなのですが、たったの1年ではあっても茶道を学べたことはとても良い経験でした。
正直に言うと、初心者の方を脅かすつもりは全くないのですが、茶道は楽しいだけじゃなく、『日日是好日』でも触れられているとおり、凹むこともあります。
なにせびっくりするくらい諸々の所作が覚えられないんです。自分のポンコツさに自分で驚いてしまうほどです(苦笑)
ここは挨拶すべきかしないべきか、この畳は右足と左足のどっちで越えるべきか、次はお湯と水のどっちか、あれ、次はなんだっけ?
大の大人がこんなことを真剣に考え、やばい思い出せないと焦ったり、先生に指摘されるとビクビクしたり、自分のできなさにあきれてトボトボ帰る日が続いたこともありました。
(次の所作は何かを考えるより、最終的にどうしたいかをイメージして逆算すると、次の所作がわかるなと、茶道を習って一年したころに思いました)
でも、茶道教室に行くのは毎週楽しみでした。
一番好きだったのは、茶室に入れば俗世間のノイズを全て遮断できること。集中できて、無心になれて、静心できること。
お稽古の前後に、茶室の手前に正座し、目の前に扇子で現実と茶室の間に線を引き、「よろしくお願いいたします」「ありがとうございました」。
こう宣言することで、茶室という聖域に出入りできる感覚がたまらなく好きでした。茶室にいる間は、現実の嫌なこと面倒くさいことを全部忘れられる。穏やかな気持ちで、美味しいお茶と和菓子をいただける。そうすることで心をリセットして、また現実世界に戻って行く。
日本文化に茶道があって本当に良かった。茶道は最高です!
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