『ビルマの日々』とは?
『ビルマの日々』はイギリスの小説家ジョージ・オーウェルさんが1934年に発表したデビュー作(長編小説)です。
ジョージ・オーウェルさんは、イギリス植民地インドの支配下にあったバルマに警察官として赴任していた経験があり、本作はそのときの経験を元に書かれました。
本作で描かれる植民地支配と人種差別から、欧米人の傲慢と偏狭が浮き彫りになります。支配する側にいながら植民地支配や人種差別に疑問を持てたのは知性がある証ですね(ブラボー!)
登場人物が特定できるほどリアル過ぎたため、最初の出版はUSとなり、UK版の出版は修正のために一年遅れたそうです。
『ビルマの日々』あらすじ
舞台は1920年代、イギリス植民地のビルマの小さな村。物語は、悪役ウーポーチンの登場から始まります。ウーポーチンは56歳のビルマ人男性で、仕事は裁判官。収賄は当然のこと、人の弱みにつけ込み裏で人や噂を操り、利益を貪るクロコダイルのような男です。引退も近づいた今、お金は十分あるので、次は名誉が欲しいと思っています。
そんなとき、欧米人クラブに欠員が出て、現地人から1人補充することになりました。このクラブのメンバーになりたいウーポーチンは、ライバルとなるインド人医師のヴェラスワミを陥れようと謀略を企てます。しかしビルマは仏教の国。輪廻転生の来世を気にするウーポーチンは、残りの人生で徳を稼ぎカルマを調整したいと思っています。
本作の主人公ジョン・フローリーは、35歳のイギリス人男性で、仕事は木材商人。ビルマに10年住んでいて、イギリス支配前のビルマが良かったと思っています。フローリーにはビルマ人の愛人マーフラメイがいましたが、ある日イギリス人の若き娘エリザベスが町に来ると、その愛人を捨てエリザベスにアプローチを開始。しかし、エリザベスは欧米人に特有の傲慢と偏狭が酷く、なかなかビルマの良さをわかってもらえません。
あるとき、欧米人クラブのエリスが殴った現地の少年が失明し、それをきっかけに反乱が起こります。欧米人クラブは現地ビルマ人達に囲まれてしまいますが、フローリーの活躍で反乱は鎮圧。フローリーは英雄となり、エリザベスとも良い感じになったかと思いきや、愛人のマーフラメイが騒ぎ出し、また、ウーポーチンの陰謀のターゲットにもなり…。フローリーとエリザベスの恋、欧米人クラブのメンバー、そして悪人ウーポーチンの行方はどうなるのか?
『ビルマの日々』の感想・考察
欧米人の傲慢と偏狭
『ビルマの日々』で描かれる欧米人の傲慢と偏狭がひどくて、人によっては読んでいて気分が悪くなるかもしれません。
でもジョージ・オーウェルさんは欧米批判の書として書いてるはずで、よりよい世界を作っていく為には必要な作品だと思います。
色々ひどいと思ったところはあるのですが、特に印象に残ったのはエリザベスの発言です。
‘This tea looks absolutely beastly. It’s quite green. You’d think they’d have the sense to put milk in it, wouldn’t you?’
‘It’s not bad. It’s a special kind of tea old Li Yeik gets from China. It has orange blossoms in it, I believe.’
‘Ugh! It tastes exactly like earth,’ she said, having tasted it.
上手く訳せないのですが、要は、中国の緑茶を、獣の飲み物のよう、地球(土)の味がする、なぜミルクを入れないのか理解できない、みたいですね。
当時のイギリスに生まれていたら、こうなってしまうのが普通のことだったのでしょうか。アジア人としては気分が悪いですが、反面教師として、より良い未来を作って行くために、『ビルマの日々』は必要な作品だと思いました。
エリザベスのような傲慢と偏狭が大多数だとしたら、その問題点に気づいたジョージ・オーウェルさんは流石の知性だなとも思います。
最も印象に残ったのは悪役
ひどいのは欧米人だけではありませでした。
作中一番の悪役は現地の裁判官ウーポーチンで、人の弱みにつけ込み、裏で人や噂を操り、利益を貪るクロコダイルのような男。物語内の役割分担という意味ではキャラが際立っていて面白かったです。
正直、主人公のイギリス人よりの、現地ビルマ人のこの悪役が一番印象に残りました。
ウーポーチンは仏教の輪廻転生を信じていて、来世の為のカルマ調整としてパゴダ(仏塔)を建てようとします。動機はあくまでカルマ調整で全然反省していないところが、悪役を全うするという意味で、良かったです。
この人物はフィクションかリアルか。リアルだったらエグいです。仏教の輪廻転生の観点では、来世は鼠か蛙で蛇に貪り食われる側だと思います。
フォーリーの顔にある三日月のあざ
主人公フォーリーは左目から口にかけて生まれつき三日月のあざ(birthmark)があり、顔を左側から見られることを嫌います。作者のジョージ・オーウェルさんはなぜ主人公にこのようなbirthmarkを与えたのでしょうか?
正解はわかりませんが、英語版Wikipediaには「a symbol of his weakness(彼の弱さの象徴)」と書かれていました。個人的に思ったのは、キリスト教の原罪みたいなもので、世界を植民地支配しているイギリス人が生まれながらに負っている原罪を表しているのかな、などと思いました。
ジョージ・オーウェルさんがビルマ(現ミャンマー)で見たもの
バルマ(現ミャンマー)はジョージ・オーウェルさんが植民地警察として赴任した国。2015年にミャンマーを旅したときの写真があるので、以下に掲載します。オーウェルさんと少しでも似たものが見れていたら、それをこの記事を読んでいるあなたと共有できたら、うれしいです。
▼2枚:マンダレー:バルマ最後の王朝の首都。現在はヤンゴンに次ぐ第二の都市。オーウェルさんも王宮は見ていたはず(現在の王宮は復元されたものだけど雰囲気は似ているはず)。
▼2枚:ピンウールィン(別名メイミョー):マンダレー郊外の避暑地。マンダレーの夏はめちゃくちゃ暑く、オーウェルさんを含むイギリス人はみんなここに避難していたらしいです。
様々なタイプのパゴダ(仏塔)
バルマ(現ミャンマー)は仏教ガチの国。『バルマの日々』で一番の悪役ウーポーチンが輪廻転生を気にしてパゴダ(仏塔)を建てようとする設定にはリアリティがあります。
2015年のミャンマーの旅で、様々なタイプのパゴダを見たので、その写真も以下に共有します。
▼シュエダゴン・パゴダ:ヤンゴン中心部にある寺院。仏教の重要な聖地。
▼バガンの遺跡群(世界遺産):寺院やパゴダが点在する世界三大仏教遺跡のひとつ。
▼カックー遺跡:インレー湖東側の秘境。パゴダが林立していて圧巻なんだけど、人?の像がかわいいなと思ってこっちが印象に残っている。
▼チャイティーヨー・パゴダ:落ちそうで落ちないゴールデンロックが不思議。
ミャンマー旅日記(2015年)
チャイティーヨー・パゴダ
以下はチャイティーヨーに行ったときに殴り書いたメモで、会話相手はタクシードライバーさんです。
朝5時発のタクシーでヤンゴンからチャイティーヨーに移動、ヤンゴンもだけど途中の田舎の町がえげつない、インドの田舎みたい、めちゃワイルド、セカンドラストフロンティア(ラストフロンティアは北朝鮮)
町と町の間はひたすら平地と山、自然以外何もない、自然がめちゃリッチ、ライス、ウォーターメロン、ポテト、トマト、オニオン、ビーン、シュガー、ラバー、オイル、ガス、ジュエリーがたくさん採れる
自然はリッチだけど人々はプアーだ、ガバメントがほとんど独り占め、中国にオイルやガスを売った利益はガバメントの懐に入る、人々には還元されない、時には中国に無償でオイルやガスを提供してる、ガバメントもクソだけど中国もクソだ
高速道路や観光地どこに行ってもガバメントにエントリーフィーを盗られる、アゲインアンドアゲインアンドアゲインアンドアゲイン、エブリウェアガバメント
ガバメントは人々に嫌われてるから未開の地ネーピードーに逃げた、そこなら誰もいない、ヤンゴンもだけどヤンゴン川の対岸の村はとても貧しい、彼らを助ける代わりにネーピードーに新しく快適な都市をガバメントのために作った
ミャンマーは民主化したんじゃないの?なぜそんな奴らがガバメントなの?ガバメントは嘘つきだ、選挙の結果をごまかしてる、今年の11月にまた選挙がある、ミャンマーを変えなければならない、でもきっと変えられない、スーチーさんの党に投票してもガバメントに結果をごまかされるから
でも変化は確実にある、3年前チャイティーヨーに連れてきた観光客は1年に5人しかいなかった、今は1年に100人以上連れてきてる、数が多すぎるからもう数えていない、チャイティーヨーに来るたびにブッダにお祈りをする、また観光客を連れてここに戻ってこれますようにって
仏教には大切なことが5つある、嘘をつかない、盗みをしない、殺生をしない、他人の夫や妻に手を出さない、アルコールを飲まない、私は私自身の中にブッダを見つけた、ブッダと私は一体だ
ミャンマーはインターネットコネクションが弱い、ヤンゴンでも場所によって繋がらなくなるから携帯電話を3台持ってそれぞれ別のキャリアにしてる、特に田舎は酷い、シット
ジェネラル(将軍)ネウィンの話をふったら空気が悪くなった、ネウィンは最悪のクソだ、ホントに怒ってたからそれ以上話を広げられなかった、沈黙、マイケルジャクソンの曲が流れてた
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