2023年最新:イーロン・マスク公式伝記の感想(ウォルター・アイザックソン)

2023年最新:イーロン・マスク公式伝記の感想(ウォルター・アイザックソン) アメリカ

2023年9月、イーロン・マスクさん初の公式伝記が世界同時発売されました。

筆者はスティーブ・ジョブズさんやレオナルド・ダ・ヴィンチさんの伝記で実績のあるウォルター・アイザックソンさんで、時代の寵児×伝記のトップライターのコラボレーションです。

正直、イーロン・マスクさんのことは断片的な情報を知っているだけで、世界一の大富豪、宇宙開発や電気自動車をやってる人、何かと世間をお騒がせしている人、という程度の認識でしかありませんでした。

好き嫌いはさておき、イーロン・マスクさんが時代の寵児であることは間違いないので、この機会に伝記を読んで自分の認識をアップデートしてみようかな、と思いこの本を読んでみました(精確には、英語版をAudibleで聴いたのですが、便宜上「読んだ」とさせてください)。

以下はその感想です。

イーロン・マスクの伝記の感想 1

イーロン・マスクの伝記2023年版を読んだ感想

顔写真(表紙)

イーロンマスクの顔写真(表紙)

これは言ってはいけないことかもしれませんが、良い意味で言うので許してください。

私はこの写真にサイ◯パ◯みを感じました。笑顔の写真もあり得たろうに敢えてのこれ。黒い背景とミステリアスな合掌ポーズに少しの怖さも感じます。

未来を作る人間は凡人の理解を超えている、というメッセージでしょうか?

この表紙だけでThis is Elon Muskが伝わってくる良い表紙だなと思いました。

※日本語版は黒背景と白背景の上下分冊ですが、オリジナルの英語版は黒背景の1冊

エピグラフ:サタデー・ナイト・ライブでの発言

To anyone I’ve offended, I just want to say, I reinvented electric cars and I’m sending people to Mars on a rocket ship. Did you think I was also gonna be a chill, normal dude?

気分を害した人たちに言いたい、私は電気自動車を改革し、ロケット船で火星に人々を送ろうとしている。そんな私が落ち着いた普通の奴だとでも思いましたか?

2021年5月8日、イーロン・マスクさんはアメリカの人気番組サタデー・ナイト・ライブに出演。上記のように発言し、これがこの伝記のエピグラフに採用されています。

(当日の発言の中では、アスペルガー症候群だと明かしたことも話題になったようです)

このエピグラフには笑いました。確かにそうだなと。そして、最初から笑かしてくれるこの伝記にますます興味が湧き、楽しみな気持ちで本編に入ることができました。今まで読んできた中でも最高のエピグラフの一つだと思います。

実際の映像を切り抜いて字幕を付けてみたので、こちらもご参考までです。

また、この伝記のエピグラフは、上記のイーロン・マスクさんの言葉とともに、スティーブ・ジョブズさんの以下の言葉も併記されています。

The people who are crazy enough to think they can change the world are the ones who do.

世界を変えられると思うくらい十分に狂った人間が実際に世界を変えていく。

スティーブ・ジョブズさんからイーロン・マスクさんに世界を変えるバトンが渡されていると思うと胸熱ですし、イーロン・マスクさんの人物像を理解するうえでも役に立つ言葉なのかなと思いました。

イーロン・マスクの伝記の感想 2:人柄

イーロン・マスクの人柄

修羅の国、南アフリカ出身

アメリカ人のイーロン・マスクさんはアメリカ出身と思いきや、南アフリカの出身だそうです。

当時はまだアパルトヘイト下で、この伝記で語られるエピソードにはドン引きしました(「リアル北斗の拳」「修羅の国」などと呼ばれるのもうなずけます)。

さらには、父親がDVをするクズ男(今も金をたかっているクズ)で両親は離婚したり、少年期にはいじめで顔が文字通りボコボコになるまで殴られたり。様々な経験がPTSDとなり、感情を閉ざすようになり、それがリスクをリスクと感じない性格につながっているとか。

人生始まってからのエピソードが強烈すぎて、これではいわゆる普通の人間には「ならない」と言うか「なれない」と思いました。当たり前ですけど改めて、人にはちゃんと背景があるのだなと。

SF好き:バイブルは『銀河ヒッチハイクガイド』

アメリカのビッグテック企業のCEO達の特徴にもれず、イーロン・マスクさんも当然のようにSF(サイエンスフィクション)が大好きなようです。人生に意味はないのではと絶望していた十代の頃、SFと出会い救われたのだとか。

その中でも最も重要なSFはダグラス・アダムズさんの『銀河ヒッチハイクガイド』で、以下の一文はイーロン・マスクさんのビジョンを理解するうえで理解しておく必要がありそうです。

Answer to the Ultimate Question of Life, the Universe, and Everything
生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え

X.com、Space X、X(ツイッター)など、イーロン・マスクさんは「X」の一文字を多用しがちですが、Xが持つ何でもありで全てを網羅する感じは、上記の一文に由来しているようです。

デーモンモード

イーロン・マスクさんが持つダークサイドを、元パートナーのグライムスさんは「デーモンモード」と名付けたようです。

昔のスティーブ・ジョブズさんにはReality Distortion Field(現実歪曲空間)という狂った面があったり、アマゾンのCEOジェフ・ベゾスさんも鬼のように怖いとかで、世界を変えるほどの企業のCEOはどうしてこうなのか・・・苦笑

友人としても、上司としても、絶対にかかわりたくないと思いました。

ただ、前述の南アフリカでの体験がデーモンモードに影響していることは想像に難くなく、だから許せとはならないですけど、イーロン・マスクさんに対する一定の理解や同情の気持ちを持ってもいいのかなと思いました。イーロン・マスクさんだって、好きであんな体験をしたわけではないと思うので。

世界一の富豪だけど不幸

イーロン・マスクさんはTIME誌が選ぶ2021年の Person of the Yearで、同年に世界一の富豪にもなりましたが、実際は不幸だったそうで、ここは注目してもよいかと思いました。

庶民の私からすると、世界一の大富豪になれたらめちゃめちゃ楽しそうな気もしますが、人生というものはなかなか難しいものなのですね。

ミニマリスト

イーロン・マスクさんは豪邸も含め、ほぼ全ての所有物を売却し、いわゆるミニマリストになっているようです。

(人でもプロセスでも余計なものはdelete[削除]したがるようで、これもある意味ミニマリストに通じるものがあるかもしれません)

興味があるのは何を買うかじゃなく、何をするか、そしてその何かとは宇宙開発を始めとする文明を進化させる仕事。

世界一の資産のほとんどを、私腹を肥やすためではなく、未来を切り開く夢に投入していると考えると、なかなかできることじゃないし、ピュアな人なのかなと思いました。

デーモンモードはダメですけど、人の悪いところだけを見て、人のWorst Versionを作りあげるのもよくないので、良いところと悪いところを総合的に見れるとよいのかなと思います。

その意味で、今回の伝記でイーロン・マスクさんの様々な面を知ることができたのは良かったです。

イーロン・マスクの伝記の感想 3:仕事

イーロン・マスクの仕事

以下に、イーロン・マスクさんの仕事を時系列に整理してみました。

この伝記だけでなく、自分で調べた内容も追加しているので、感想と言うより、自分用のメモ的なところもありますが、色々な仕事をしていることが簡単にわかれば幸いです。

Zip2 ジップツー:1995年設立

イーロン・マスク_ジップツー_Zip2

Zip2はオンラインのシティガイドを新聞社にライセンス販売する会社で、1995年にイーロン・マスクさんが初めて起業した会社です。

イーロン・マスクさんはこのZip2の売却でミリオネアになります。

X.com エックスドットコム:1999年設立

イーロン・マスク_X.com

X.comは初期のオンライン銀行です。X.comのコンセプトは壮大なもので、銀行、小切手、クレジットカード、投資、ローンなど、全ての金融サービスを網羅することを目指していたそうです。

X.comの「すべて」というコンセプトに最も影響を与えたのは『銀河ヒッチハイクガイド』の「生命、宇宙、そして万物(Life, the Universe and Everything)」。SFは偉大です。

PayPal ペイパル:2000年設立

イーロン・マスク_ペイパル_PayPal

PayPalはX.comがライバル会社Confinityと合併してできた会社です。

PayPalができる前、X.comとConfinityのどちらが主導権を握るかという駆け引きをしていたときのエピソードには笑いました(イーロン・マスクさんがどれほどリスクを恐れていないかという狂った話)。

そんなこともあったからか、PayPal時代の本を書く計画があったとき、イーロン・マスクさんの章のタイトルは「The man who didn’t understand the meaning of the word “risk”(「リスク」という言葉の意味を理解していなかった男)」だったそうです(笑)

Space X スペースエックス:2002年設立

Space Xは宇宙輸送や衛星インターネットのサービスを提供する会社です。

宇宙船の名前はStarship(スターシップ)で、月周回旅行の席を予約しているのがあの前澤友作さん。同乗者として世界中からアーティストを募集しており、自分だけのためではなく、人類のための宇宙旅行になっている点がすばらしいと思います。

衛星インターネットの名前はStarlink(スターリンク)で、ウクライナへの無償提供でも話題になりました。一部に誤解があってイーロン・マスクさんを責める声があったようですが、この伝記を読むとそれは全くの見当違いであることがわかります。断片的な情報だけで人のWorst Versionを作ってはいけない事例の一つであり、『ファクトフルネス』の以下の一行を思い出させられます。

Forming your worldview by relying on the media would be like forming your view about me by looking only at a picture of my foot.

メディアに依存して世界に対する見方を形成することは、私の足の写真だけを見て私に対する見方を形成するようなものだ。

Space X社の最初のロケットは失敗に終わり、エンジニアは泣き、拾い集めた残骸から原因を考えたようです。テクノロジーは勝手に進化するのではなく、多くの人々のハードワークによって進化するというイーロン・マスクさんの言葉が印象に残りました。

Space X社の皆さんのハードワークと、それを応援する人々の姿に感動します。私もXに少額ながら課金して、イーロン・マスクさんの宇宙開発を応援しようかな?と考え中です。

Tesla テスラ:2003年設立

イーロン・マスク_テスラ ロードスター_Tesla Roadster

Teslaは電気自動車やクリーンエネルギー関連機器の会社です。Teslaに限った話ではないですが、「大事なのは製品じゃなく、製品の効率的な作り方」というイーロン・マスクさんの思想が印象に残りました。

現在のTeslaは、AIカンパニー、エナジーイノベーションカンパニーへと発展を続けているようで、電気自動車の会社という認識は改める必要がありそうです。

以下のOptimusとNeuralinkはTeslaがやっているものです。

Optimus (Tesla Bot) オプティマス(テスラボット)

イーロン・マスク_オプティマス_Optimus

Optimus (Tesla Bot)はTeslaが開発するヒューマノイドロボット。

人間の仕事がすぐにゼロになるとは思いませんが、減っていくスピードは意外と速いのかも?世界はベーシックインカムを真剣に考えておいた方がよいのかもしれません。

働かなくても最低限の生活は保障され、仕事は強制から選択へ(やりたくない人はやらなくていい、やりたい人だけがやるもの)。「働かないことは悪いこと」という価値観が絶対的で永遠不変と思っていると、新しい世界に適応するときの弊害になってしまうかも?

Neuralink ニューラリンク

イーロン・マスク_ニューラリンク_Neuralink

Neuralinkはヒューマンマシンインターフェースの話(脳に埋め込むチップとか。グロい画像もあったので、ここではこれくらいの画像にしておきました)。SFの話が現実に近づいているみたいで、興味と同じく怖さも感じてしまいました・・・

Open AI オープンAI:2015年設立

イーロン・マスク_オープンAI_OpenAI

OpenAIは人口知能(AI)を開発している会社で、あのChatGPTはOpenAIの製品です。イーロン・マスクさんは設立者の一人として関与していたそうです。

Teslaの自動運転、Optimus、NeuralinkなどはAIから学習でき、X(旧ツイッター)もどんな投稿が有害で拡散させるべきでないかなどをAIで学習できるらしく、イーロン・マスクさんが手がける仕事が互いに関連している点は流石です。

リスクをリスクと感じないあのイーロン・マスクさんが、AIの発展を警戒している点は注目する価値があるかもしれません。素人としては、ChatGPTの精度がもっと上がればいいのにと思ってしまいますが、AIの進化が早すぎて制御不能になってしまった場合、人間がAIに支配されてしまう未来が絶対に来ないとは言い切れないので・・・

The Boring Company ザ・ボーリング・カンパニー:2016年設立

イーロン・マスク_ザ・ボーリング・カンパニー_The Boring Company_

ザ・ボーリング・カンパニーはトンネルを掘る(boreする)会社です。

(Boringには「掘る」の他に「退屈」という意味もあり、確かにただひたすら掘るだけなら退屈なので、その辺も自虐的なユーモアとして会社名に反映させているようにも思います)

構想としては「ハイパーループ」と呼ばれる地下トンネルで各都市を繋ぎ、地上の渋滞を解消するとともに、例えばニューヨークとワシントンDC間を30分未満で移動できるようにするなど、実現すれば移動に革命がおこりそうです(現状、NYとDC間は飛行機で1.5時間、車で4時間)。

Twitter ツイッター:2023年からX

イーロン・マスク_エックス ツイッターX Twitter

イーロン・マスクさんは2022年にツイッターを買収し、2023年に青い鳥のロゴをXの黒いロゴに変更しました。

今回の伝記を読んで、ツイッターの問題の本質は「言論の自由」と「ヘイトの抑制」のバランスをどうとるかで、イーロン・マスクさんはとても難しい問題に取り組んでいるなと思いました。

億単位のユーザーの投稿を人力でパトロールするのは不可能なわけで、この問題をAI技術で解決できるかどうか。これは応援したいと思いました。

また、ツイッターの名前がXになったことは注目に値して、X.com時代のコンセプトや『銀河ヒッチハイクガイド』の「生命、宇宙、そして万物(Life, the Universe and Everything)」を思い出す必要がありそうです。

おそらく、イーロン・マスクさんはツイッターをただテキスト・画像・動画を共有できるSNSにしておくつもりはなく、中国のWeChatのようにお金のやりとりができる方向へ改革して行くのかもしれません。

ここで思ったのは、スマホに関してはアメリカより中国の方が進んでいて、スマホ最先進国は中国なのだなと。TikTokも中国から出てきましたし、なんでもかんでもアメリカが最先端という考えも改めた方がよいと思いました。

xAI エックスエーアイ:2023年設立

イーロン・マスク_エックスエーアイ xAI

イーロン・マスクさんはAIの制御不能な進化を懸念していると先に述べましたが、このxAIという会社はその問題をクリアするための会社です。

つまり、安全性に配慮したうえでAI開発を行う会社というわけです。

AIが人間を支配する世界なんていう極端なことになる前に、例えば、AIが意思を持ち(または悪人が利用し)、X(旧ツイッター)上の言論を滅茶苦茶に荒らしてしまうなどという可能性もありますよね。

AI開発に一定の規制が必要なことは容易に理解できるので、xAIの理念にはとても共感できます。

そして、xAIの究極の目的は、日本語版wikipediaによると「宇宙の本質を理解すること」。それはつまり、イーロン・マスクさんが十代の頃に読み、彼のバイブルとなった『銀河ヒッチハイクガイド』の「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え(Answer to the Ultimate Question of Life, the Universe, and Everything)」。

AIの進化において大量のデータを食べさせることが重要なのは想像に難くないですが、リアルはTesla、ネットはX(旧ツイッター)、宇宙はSpaceXからデータがとれるイーロン・マスクさんは、究極の疑問の答えに一番近い位置にいる人間なのかもしれません。

イーロン・マスクの伝記の感想 4:プライベート

人のプライベートの話は好きじゃないので、ここでは最小限の1点だけ。

元パートナー、グライムスさん(カナダ出身のソロミュージシャン)の『Player of Games』という曲が、イーロン・マスクさんのことを歌っているようです。

この曲の歌詞もイーロン・マスクさんの人柄を知るうえで有用と思いますので、以下に一部を引用します。

Player of Games

I’m in love with the greatest gamer
私は最も偉大なゲーマーと恋をしている
But he’ll always love the game more than he loves me
でも彼はいつも私よりゲームを愛している

Sail away to the cold expanse of space
(彼は)冷たく広々とした宇宙に出航する
Even love couldn’t keep you in your place
愛でさえもあなたをあなたの場所(地球のこと?)に止めることはできない

If I loved him any less
もし私が彼をあれほど愛さなければ(ゲームの邪魔をしなければ)
I’d make him stay
彼はまだ私といただろう
But he has to be the best player of games
でも彼は史上最高のゲームプレーヤーにならなければならない

補足:伝記作家ウォルター・アイザックソンとは?

伝記作家のウォルター・アイザックソン

ウォルター・アイザックソンさんは1952年生まれのアメリカの伝記作家です。

その他の職業として大学教授、ジャーナリスト等もしており、過去にはCNNの会長兼CEO、TIME誌の編集長等も歴任していたらしく、私は今回調べるまで知りませんでした。

伝記作品でいうと、今回のイーロン・マスクさんの他にはスティーブ・ジョブズさんやレオナルド・ダ・ヴィンチさんの伝記が有名です。

この記事は以上です。長文を最後までお読みくださりありがとうございました。

イーロン・マスクさんの伝記は、彼の生い立ちから仕事やプライベートまで、彼のことがわかるだけでなく、彼が手がける仕事から人類の未来が見えるという点でも、読んで良かったなと思いました。ご興味のある方はぜひ読んでみてください!

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