Taps at Reveille(バビロン再訪を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド4th短編集)

Taps at Reveille_スコット・フィッツジェラルド アメリカ
スコット・フィッツジェラルドの全長編&短編集を原書で読んだ感想・考察
感想・考察の根拠には、スコット・フィッツジェラルドさんのエッセイや手紙、ヘミングウェイさんの視点、映画、ドラマなど、アクセスできるものを可能な限り利用しました。

この記事は↑のまとめ記事から切り出した詳細記事です。

短編集『Taps at Reveille』とは?

『Taps at Reveille』は、1935年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの4th短編集です(tap at:~を軽くたたく、Reveille:起床の合図)。

4th長編『夜はやさし』は1934年出版なので、その翌年に発売されました。

評価の高い『バビロン再訪(Babylon Revisited)』や、次作5th長編『ラストタイクーン』と同じくハリウッドを舞台にした『狂った日曜日/クレイジーサンデー(Crazy Sunday)』(この2作は特におすすめ)、

さらには、バジルを主人公とした「バジルストーリーズ」、ジョセフィーヌを主人公とした「ジョセフィーヌストーリーズ」など一連の作品も含む、全18作品を収録したボリューミーな短編集になっています。

しかし、史上最高の小説を書きたいスコット・フィッツジェラルドさんにとって、短編を書くことはお金の為の売春(本人の言葉)という位置づけで、短編の中にはtrash(=ゴミ[本人の言葉])も混ざっているようです。

個人的に、4つの短編集の中で一番trashが多いのが本作だと思っています。正直、ほとんどの作品は読んでいてあまり楽しめませんでした。

短編集『Taps at Reveille』の日本語版

『Taps at Reveille』の日本語版は2023年9月時点でまだ存在していませんが、前述のとおり個人的にはあまり良いと思わないので、日本語版は別になくてもよいと思っています。

ただ、『バビロン再訪/バビロンに帰る(Babylon Revisited)』と『狂った日曜日/クレイジーサンデー(Crazy Sunday)』は名作だと思うので、興味のある方にはぜひ読んでみていただきたいです。

村上春樹さんの訳で読みたい方かつバビロン~だけでよい方は、こちらの『バビロンに帰る(Babylon Revisited)』がおすすめ。村上春樹さんのエッセイも収録されています。

岩波文庫版の短編集には、『バビロン再訪(Babylon Revisited)』と『狂った日曜日(Crazy Sunday)』の両方が収録されているので、両方読みたい方にはこちらがおすすめです。

短編集『Taps at Reveille』を原書で読んだ感想

以下、『Taps at Reveille』を原書で読んだ感想を簡潔にまとめてみました(あらすじのみのもありますが)。個人的なメモではありますが、何等か参考になれば幸いです。

The Scandal Detectives

怪盗ルパン好きの14歳の少年バジルは友人のリプリーとスキャンダル探偵団を結成。街の人々の秘密を記録したノートはレモンジュースのインクで書かれ、透明の文字は火で炙ると浮かび上がる。バジルは街で一番モテる少年に好きな子を取られてしまい仕返しを企む…

The Freshest Boy

バジル少年15歳は故郷を出て東部の高校に自信満々に進学するが、生意気(fresh)さが原因で生徒にも先生にも嫌われて孤立。この状況から逃げるべきか、逃げないべきか?「He was one of the poorest boys in a rich boys’ school」という設定(スコット・フィッツジェラルドさんの実体験)がせつない。

He Thinks He’s Wonderful

15歳のバジル少年は夏休みで地元に帰省する。生意気で自慢話をし過ぎる癖から学校では嫌われていたが、そこから学んでもいて、地元の友人たちと再会すると女の子達にもモテてた。しかしつい悪い癖が出てしまい…(stuck up:高慢な、swelled head:ひどい自惚れ)

The Captured Shadow

バジル少年15歳は夏休みに帰省し自分で脚本を書いたペテン師ものの笑劇をみんなと上演。キャスティングもリハーサルも男女の関係が絡み問題続きだったが、劇の成功のために人生で最も酷いことをして何とか本番にこぎつける…バジルは終演後に何を思う?

The Perfect Life

バジル少年16歳は生意気さから学校で最も嫌われていたがアメフトの試合で大活躍して一躍スターに。卒業生からPerfect Lifeを生きて皆んなの模範になれと言われその気になる。友人宅の感謝祭パーティーで美少女に出会うと今度は真面目すぎて嫌われてしまい…

ここ迄、バジルを主人公とした短編は「Basil Stories」と呼ばれています。

First Blood

16歳のジョセフィーヌは富裕層のおてんばお嬢様。男にもモテて自惚れている。嫉妬され有る事無い事も噂される。本作では2人の男と好きさ嫌よ的になんやかんやする。妻ゼルダの統合失調症の状態が悪い時に出版され、収入は治療費に充てられた。

A Nice Quiet Place

16歳の令嬢ジョセフィーヌは男にモテモテで嫉妬とゴシップの対象になっていた。都会シカゴの若者は異性と外出、ダンス、キスばかり。落ち着いてほしい両親は彼女を刺激のない田舎に連れていく。しかしそこに超絶イケメンがいてアプローチするが彼の反応はイマイチで…

A Woman with a Past

17歳になったジョセフィーヌは相変わらず男達を狂わせるスキャンダラスな存在で、今回はイェール大学野球部のキャプテンのことが気になっていた。しかし彼には優等生で人気もあるアデーレがいてジョセフィーヌは嫉妬する。さらにはある不運も重なり…

ここ迄、ジョセフィーヌを主人公とした短編は「Josephine Stories」と呼ばれています。

Crazy Sunday 狂った日曜日/クレイジーサンデー

スコット・フィッツジェラルドさんのハリウッド時代の実体験がベース。ジャズエイジとの決別。ジャズエイジはもう飽きた。同じところを擦りすぎ。当時の読者も似た感覚だったのかも?

若手脚本家のジョエルは日曜日も家で仕事をしていたが、あるとき業界のパーティーに呼ばれる。酒は飲まないつもりだったが結局飲んでしまい、さらには監督の妻と危ない関係に。なんやかんやで監督が死に、それを受け入れたくない妻がしようとしたことがエグい。でもその発想面白かった。

Two Wrongs

脚本家のビル26歳と仕事が欲しいダンサーのエイミー18歳の物語。ビルはイケメンでヒット作も沢山あるが傲慢で酒癖も悪い。なんやかんやあってビルは地方で肺の療養が必要になる。エイミーに一緒に来て欲しいが彼女にダンスのキャリアでチャンスが訪れる。お互いの本音と建前が交錯し…

The Night at Chancellorsville

時は南北戦争時代のアメリカ。ノラとネルはワシントン行きの列車に乗っていた。途中のチャンセラーズヴィルで列車は南軍(反乱軍)の襲撃を受ける。敵兵が車両内まで来る程の危機だったが北軍の列車は何とか目的地に到着する。翌日の新聞はこの襲撃に触れなかった。

The Last of the Belles

アメリカ南部の架空の街タールトンは軍の駐屯地でアンディを含む多くの兵士達が街一番の美人エイリーにアプローチしていた。アンディは誠実ではないという理由で断られる。エイリーは金持ちと結婚し離婚。やがて戦争が終わる。軍が撤収したタールトンに残ったものとは?

Majesty

エミリーは美貌と名声を持つ大富豪の娘だが同世代に比べて結婚が遅れていたがついに結婚。と思いきや結婚式当日に気が変わり逃走し行方不明に。スキャンダルを避けるため従姉妹のオリーブが代わりに結婚した。オリーブ夫婦はやがて容態の悪い父からエミリーを探し連れ戻すように依頼される…

Family in the Wind

フォレスト45歳は有能な医師だったが今はアル中で引退。弟から甥の頭の銃弾を除去する手術を依頼されるが、アル中の震える手では無理だと断る。そんなとき大嵐が来て街は大破、病院は大混乱。傷ついた人々を見過ごせないし、今ならどさくさに紛れて甥の手術もできるかも…

A Short Trip Home

エディはイェール大学の2年生でクリスマス休暇で帰省していた。しかし想いを寄せるエレンの様子がおかしい。邪悪な笑みを浮かべる超自然的な男に取り憑かれているらしく何かと1人になりたがる。エディはエレンを守るため、この男の正体を暴こうとする。

One Interne

研修医のビルは麻酔医のテアに恋するが彼女は有能な外科医ダーフィーの愛人だった。ビルは研修の一環の手術で2人の姿を見て更に嫉妬する。そんな中ビルは腸軸捻でダーフィーの手術を受けることに。麻酔で意識を失っている間に2人が仲良くしていると思うとまた嫉妬を感じた。

The Fiend

妻と子を殺された夫の復讐の物語。犯人は終身刑(州法に死刑はない)。夫は定期的に刑務所に通い犯人を精神的に追い込んで行く日々が30年続く。拳銃を持参しトドメを刺そうとした日に犯人が虫垂破裂で突然死。いつしか復讐の相手は唯一の友になっていて全てを失い本当に孤独になったことに気づく。

Babylon Revisited バビロン再訪

バブルで浮かれている間になんやかんやあって妻と親権を失い、バブル崩壊で金を失い、すべてを失った男が再生を期する物語。チャーリーは娘の後見人である妻の姉or妹夫妻が住んでいるパリにやってきて、今は真面目になったことをアピールするが、後一歩のところでかつての飲み仲間が現れ…

かつて栄華を極めたバビロニア帝国の首都をバブル期の輝きを失った都市に重ねるだけなら舞台はパリ以外でもいいのでしょうけど、バビロンがユーフラテス川の両岸にあったことをパリの(セーヌ川の)右岸、左岸にも重ねているのでしょうね。適当なことせずちゃんと意図がある作品は好きです。

スコット・フィッツジェラルドさんのまとめ記事はこちら

スコット・フィッツジェラルドの全長編&短編集を原書で読んだ感想・考察
感想・考察の根拠には、スコット・フィッツジェラルドさんのエッセイや手紙、ヘミングウェイさんの視点、映画、ドラマなど、アクセスできるものを可能な限り利用しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました