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短編集『若者はみな悲しい』とは?
『若者はみな悲しい(All the Sad Young Men)』は、1926年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの3rd短編集です。
3rd長編『グレート・ギャツビー』は1925年出版なので、その翌年に発売されました。
本作には『リッチ・ボーイ(The Rich Boy)』や『冬の夢(Winter Dreams)』など評価の高い作品も収録されています。
短編はお金の為に仕方なく書いていたようですが、作者のやる気と作品の質は必ずしも一致してないようで、私は短編も、特にこの短編集は好きです。
短編集『若者はみな悲しい』の日本語版
『若者はみな悲しい』の日本語版は光文社古典新訳文庫から出ています。
残念ながら1stと2nd短編集は収録作品がそのまま完全一致している日本語版がないので、この3rdでそれがあるのは読者としてとてもうれしいです。光文社さんに感謝です。
短編集『若者はみな悲しい』を原書で読んだ感想
以下、『若者はみな悲しい』を原書(All the Sad Young Men)で読んだ感想を簡潔にまとめてみました。個人的なメモではありますが、何等か参考になれば幸いです。
The Rich Boy リッチ・ボーイ
プリンストン大学時代の富裕層クラスメイトをモデルに執筆。彼はお金持ちだけど好きな女性が他の男性と結婚して号泣。彼女を愛したようには他の女性を愛せないままLife goes on, The sun also rises。このやるせなさと喪失感の表現はスコット・フィッツジェラルドさんらしいなと思います。
Winter Dreams 冬の夢
3rd長編『グレート・ギャツビー』の最初の下書きになった作品。庶民の男性が富裕層の女性に恋(いつもの様式美)。彼女は他の男性と結婚し今は老いてかつての美貌は失われてしまう。スコット・フィッツジェラルドさんらしい喪失感。人生に問題があったから戦争が始まるのは歓迎という若者が沢山いたらしいことが衝撃的でした…
The Baby Party 子どもパーティ
子供連れのホームパーティーで、子供同士がぬいぐるみを取り合ったときに頭を床にぶつけてしまい、そのことで親同士が子供みたいな喧嘩をする話。殴り合いになって「His face look like a roast beef(顔がローストビーフみたいになった)」に笑いました。
Absolution 赦免
3rd長編『グレート・ギャツビー』のプロローグ用にギャツビー幼少期を書いたけど謎を残すために不採用になった物語。美少年ルドルフは懺悔の時に本当のことを言わず軽めの罪ばかりを告白。両親の子ではない高貴で有能な別人格を妄想で作る(ギャツビーと同じ)が罪悪感からは逃れられない。
Rags Martin-Jones And The Pr-ice Of W-les ラッグズ・マーティン=ジョーンズとイギ〇ス皇〇子
富裕層の女性のアメリカのdisり方が草(No Americans have any imagination. Paris is the only large city where a civilized woman can breathe[アメリカ人には何の想像力がない。パリは文明社会の女性が呼吸できる唯一の大都市だ。])。庶民の男性(いつもの様式美)が彼女の気を引く為にウェールズの王子が来るパーティーに彼女を連れて行くが彼は警察に追われているようで…1st短編集内の『The Offshore Pirate』と同じ仕掛け。
The Adjuster 調停人
子供は愛しているけど育児をしていると発狂しそうになる。夫のことも嫌いで子供がいなければ離婚したい。夫は妻の為に医者を呼ぶが先に神経衰弱で倒れる。妻はどうなる?医者(夫婦の調整役)が鍵を握る。夫のあの癖が気に入らないとか感情の機微が面白かったです。
Hot And Cold Blood 温血と冷血
Hot Blood(お人好し)で他人に金を貸したり(騙されたり、家計の余裕がなくなる)席を譲ったり(疲れて妻を愛する余裕がなくなる)そんな夫に妻はブチ切れ(家庭優先やろ!)これから子供も産まれるし、夫はCold Blood(冷血)に切り替える。結果はいかに?
The Sensible Thing 常識
遠距離恋愛中の2人。彼はNYに行くが成功できず貧困状態に。そんな彼と結婚することはsensible(分別がある、良識がある)ではないとして彼女は求婚を断る。一年後、彼は成功して帰ってくる。さてどうなる?富裕層は出てこないけどお金が理由で振られるいつもの様式美。
Gretchen’s Forty Winks グレッチェンのひと眠り
Gretchenは妻の名前。会社員を辞め独立した夫に大きな仕事=リッチになるチャンスが到来。この6週間は多少無理してでも仕事に集中したい。その間は退屈させてしまうけど待っていてくれる?執筆に集中したいスコット・フィッツジェラルドさんとパリピ妻ゼルダさんの関係が元ネタと思われる短編。
次作4th短編集『Taps at Reveille』の記事はこちら
スコット・フィッツジェラルドさんのまとめ記事はこちら
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