フラッパーと哲学者(氷の宮殿を収録)原書で読んだ感想(スコット・フィッツジェラルド1st短編集)

フラッパーと哲学者 アメリカ
スコット・フィッツジェラルドの全長編&短編集を原書で読んだ感想・考察
感想・考察の根拠には、スコット・フィッツジェラルドさんのエッセイや手紙、ヘミングウェイさんの視点、映画、ドラマなど、アクセスできるものを可能な限り利用しました。

この記事は↑のまとめ記事から切り出した詳細記事です。

短編集『フラッパーと哲学者』とは?

『フラッパーと哲学者(Flappers and Philosophers)』は、1920年に発表されたスコット・フィッツジェラルドさんの1st短編集です。

大ヒットした1st長編『楽園のこちら側』に続き、本作も大ヒットしました。

しかし、史上最高の小説を書きたいスコット・フィッツジェラルドさんにとって、短編を書くことはお金の為の売春(本人の言葉)という位置づけで、短編の中にはtrash(=ゴミ[本人の言葉])も混ざっているようです。

短編集『フラッパーと哲学者』の日本語版

残念ながら、『フラッパーと哲学者』の日本語版はありませんが、評価の高い『氷の宮殿(The Ice Palace)』は、この新潮文庫版に収録されています。

この新潮文庫版には、他にも名作『冬の夢(Winter Dreams)』、『金持の御曹子(The Rich Boy)』、『バビロン再訪(Babylon Revisited)』が収録されています。

前述のとおり、スコット・フィッツジェラルドさんの短編にはtrash(=ゴミ[本人の言葉])も混ざっているので、よほどのガチ勢でないかぎり、『フラッパーと哲学者(Flappers and Philosophers)』の英語版を読むことはおすすめしません。

それよりも、名作を選りすぐっている新潮文庫版のようなベスト的短編集がおすすめです。

短編集『フラッパーと哲学者』を原書で読んだ感想

以下、『フラッパーと哲学者』を原書(Flappers and Philosophers)で読んだ感想を簡潔にまとめてみました。個人的なメモではありますが、何等か参考になれば幸いです。

The Offshore Pirate

ニューヨークからフロリダへ船旅中のフラッパー(1920年代に従来の価値観に囚われず自由に生きた女性)が海賊にさらわれて、その船長と恋をする。フラッパーがいかに破天荒だったかがよくわかりました😆英語版Wikipediaによると最後の一行は「one of the best lines I’ve ever written」だそうです。

The Ice Palace 氷の宮殿

南部の街で退屈している彼女が北部出身の彼と婚約。でもお互いの地元を訪れてみたら、南北で価値観が違うみたいで合わないかも…氷の宮殿のシーンで彼女のパニックと寒さが伝わってきたところは引き込まれました。南部の墓地のシーンは絶対妻ゼルダさんの手紙に影響を受けているはず。

Head and Shoulders

哲学者(頭)と女優(肩=体)のミスマッチな恋。彼は結婚で、彼女は妊娠でキャリアを諦める。立場が逆になり、彼は体操ショーで稼ぎ(肩=体)彼女は彼のしたかった出版を実現(頭)。彼は結婚を後悔する(妻ゼルダさんに執筆を邪魔され、彼女にも書く才能があったことが元ネタ?

The Cut-Glass Bowl

35歳の既婚女性が主人公。昔は綺麗だったけど今は少しずつ…っていう設定。結婚時に貰ったcut-glass bowlに関連して不吉な出来事が次々に起こる。

英語版Wikipediaではスコット・フィッツジェラルドさん曰く「本作はworth reading、他はamusingかtrash」らしいです…

Bernice Bobs Her Hair

モテない女Berniceがモテる女のいとこの家に滞在中、助言を貰ってモテて行く。その過程で髪型をボブにすると宣言して男達の注目を集めるが本心は…陰口、罠、嫉妬、復讐など色々あって面白かった。当時ボブは非常識という価値観だったみたい。

Benediction

彼女が微妙な関係の彼氏に会いに行く前に、神学校にいる兄に会いに行く。彼女曰く避妊法もある今、宗教的生活は退屈で時代遅れ。彼女はBenediction(祝福の祈り)で不快になり気絶。さて、彼氏との関係はどうなる?欲望を開放する感じが若者に受けたのかな?

Dalyrimple Goes Wrong

Dalyrimpleは23歳男性の名前。戦争でメダルを貰う活躍をして街に凱旋するも、その後の仕事は薄給で不満。真面目にコツコツ頑張っていれば報われるって本当?どこかに成功への近道はないか?彼の行動とその結果が、意外かつ皮肉が効いていてよかったです。

The Four Fists

Samuelの顔には殴りたくなる質がある、女の子の唇がキスしたくなる質を持っているように。冒頭のこの説明がもう面白い。そして彼が殴られる話が4つ続き(4 fists=4つの拳)、殴られる度に何が悪かったかを学んで行く。面白かった。

次作2nd短編集『ジャズエイジの物語』の記事はこちら

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スコット・フィッツジェラルドさんのまとめ記事はこちら

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感想・考察の根拠には、スコット・フィッツジェラルドさんのエッセイや手紙、ヘミングウェイさんの視点、映画、ドラマなど、アクセスできるものを可能な限り利用しました。

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